本にまつわるあれこれ その2


副題:誰が本を殺すのか……やっぱオレか……


「本は買うもの」と思っていたので、図書館で本を借りて読むという習慣は、つい最近までまったくなかった。実際、たまに借りても読まないことが多かった。図書館によく行くきっかけになったのはCDだ。近所の図書館は、CDのラインナップが非常に充実しているので、これを当初からよく利用していた。結果的にこれが図書館の敷居を低くすることになったわけだ。図書館側の戦略としてこれは正しかった。図書館には利用者を増やすという目標があるため、どういう形であれ、(私のような不埒な者であっても)利用者が増えることは、図書館の目的にかなっている。
『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一著、プレジデント社)で、図書館が「ハリー・ポッター」などの人気新刊書を大量購入することの非を説いていたが、図書館のこういう方策は「図書館の敷居を低くする」という意味で理にかなっていると思う。この本では、「そういうことをするから本が売れなくなる」という主張のようだが、大量購入するような本はそもそも売れている本なのに、一般的にあまり売れないような本と混同するのは間違いだ。私は、昨日も書いたように、本が売れなくなったのは、(全体としての)本の質の低下が原因だと思っている。何かをスケープゴートにするという方法は実に安直かつ短絡的で、図書館をターゲットにするのは議論として単純すぎる。まったくもってお門違いだ。ベストセラー本など、買う人であれば、たとえ高くても買うのであって、図書館でベストセラー本を読むような人は、本来であれば買わない人々である。その人々の分を図書館が代わりに購入しているのだから、ある意味、売り上げに貢献しているとも言えるのだ。
たとえ良い本が出されてもすぐに絶版になるような風潮も考え物である。1・2年前の本が手に入らない現状は相当異常だ。以前は絶版や品切れになっても読者側はあまり気がつかなかったのだろうが、現在のようにインターネット(Amazonなどのデータベース)で在庫状況を調べられるようになると、出版社側の無責任な売り方が目につく。で、読みたいが手に入らない本はどうするかと言えば、古本を獲得するか図書館を利用するということになる。もっとも古本を買うにしても、供給がなければ手に入らないので、一番手っ取り早い方法として図書館に向かうことになる。それに図書館では大概の本が備蓄されている(最近、その事実にあらためて驚いている)。ますます図書館の価値が高くなるというものだ。
出版社側にも、売れない本の在庫を抱えたくないなどの事情はあるのだろうが、いったん売りに出したらある程度の期間継続して在庫を確保するという職業的な倫理は必要だと思う。ゴミのような本を大量に出して、しかも(良書まで)すぐに絶版にしてしまうような出版業界にはまったく共感を覚えない。スケープゴートをあげつらうよりも、自分たちの足下をしっかり見据えた方が身のためだよ。> 出版関係の人々

投稿日: 水曜日 - 9 月 28, 2005 08:10 午前          


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