ラプソディ・イン・ブルー(青の狂詩曲)


(←アサヒ・コム より勝手に拝借)

また、日本人のお祭り騒ぎが始まった。
かつてナイキの極東担当者がインタビューで、日本人のスポーツ観について
「日本人は、アメリカ人やドイツ人のようにスポーツ自体が好きなのではなくお祭りが好きなのだ」と語っていた。
そのときは「フン」と思っただけだが、その後、納得させられるシーンをいろいろと経験している。例の2002年の日韓ワールドカップもそうだし、阪神タイガースの優勝もそうだし(お祭りの要素に欠けるチームの場合は、優勝してもあまり盛り上がらない)。だからスポーツ中継でも、戦術や戦略が語られることは少なく、盛り上がりが重んじられるようだ。番組に登場する「解説者」たちを見ると良い。
昨日テレビ朝日で放送された「ワールドカップサッカーアジア地区最終予選」では、セルジオ越後と松木安太郎が解説者だった(松木安太郎はゲスト扱いかも。私はNHKで見たのでよくわかりませんが)。かれらが放送で戦術分析することはほとんどない(できないのかも……)。ほとんどは応援だ。それも熱狂的な! テレビ朝日は、むしろ意図的にそういう放送を狙っているフシがあるので、それはそれで良いのだが、ちょっとうるさすぎる。きちっと戦術分析などをやるのはフジテレビで、風間八宏と青嶋達也のコンビでサッカー中継があると、(お祭りとしてではなく)スポーツとしてサッカーを楽しめる。基本的に、サッカーの実況では、ボールを持っている選手の名前だけ言ってれば良いのだ(テレビだと選手を区別しにくいから)。「実況担当まで応援団と一緒に騒いでどうすんだ、おまえは義務を放棄しているのだ!」と悪態をつきたくもなる。
中でも日テレのサッカー中継はお粗末で、相変わらず野球中継のような間延びした中継をしている。フィールドで控えている女子アナが「(ある選手の)ご家族全員がバスで応援に来ており……」などとほのぼのしたエピソードを披露する。こちらは「今ボール持ってんのは誰だよ?」などと思いながらイライラして見ていると、その意味のないエピソード披露の間に点がドッカーンと入ったりする。「誰が入れたんだ? てめえ!」ってなもんだ(こっちも熱くなってるから)。
(サッカーに限らず)戦術分析をきちんと行うスポーツ中継は、視聴者がそのスポーツに対する理解を深めるための格好の場でもある。
たとえば全米プロフットボールリーグ(NFL)のアメリカでの放送を1年ないし2年見ていると、戦術的にもアメリカンフットボールをかなり理解できるようになる。かつて日テレではNFLを毎週中継していた(今もですか?)が、当初トンチンカンなことを言って解説者(および視聴者)の失笑を買っていた担当新人アナウンサー(カネコっていう人)が、放送を経るにつれてどんどんフットボールの理解を深め、NFLに精通してきたことに驚いたことがある。日テレの放送は、基本的にアメリカで放送されたものを適当にカットしてそれに解説と実況だけをかぶせるというものだったが、画面に戦術や戦略の解説が詳しく出たりするので、それがこのアナウンサーに浸透していったのではないかと思うのだ(勉強もしたんだろうが)。
サッカー中継を応援だけで終始させることは、結局のところ、大人のサッカーファンを生み出す機会を逸することになる。民放各局は、日本代表クラスの国際試合を持ち回りで放送しているが、そのうちの一部の放送局では、それ以外のサッカー中継はほとんどやっていない(TBSとNHKがBSチャンネルでJリーグを定期的に放送、フジテレビが海外のサッカーリーグを録画中継)。サッカーをお祭りとしてしか考えていないことがよくわかる。こういう放送がお粗末な実況になるのは必至で、個人的には、代表クラスの中継放送から辞退して欲しいと思っている。
さて昨日の日本対北朝鮮だが、試合内容はあまりレベルの高いものでなかったにもかかわらず、お祭り騒ぎにふさわしい結末になった(ロスタイムに決勝点!)。ちょっとできすぎじゃないか……と思ってしまった(ジーコの起用も大当たり!)。今からまた半年間、この種のバカ騒ぎが続くのかと思うと、サッカー好きの私でも少しうんざりする。

投稿日: 水曜日 - 2 月 09, 2005 12:07 午後          


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