金曜日 - 12 月 24, 2004男が、病院で介護するということ ★★★☆父親の介護に携わった、あるフリーライターが描く現実。
介護対象の父親を呪いながら、そんな自分に自己嫌悪する。自身の生活を赤裸々に描く力作で、松下竜一の初期の諸作を思い起こさせる。 医療の問題も浮き彫りにしている。 木曜日 - 12 月 23, 2004木曜日 - 12 月 23, 2004ウルトラマラソン 完走の幸せリタイアの至福 ★★★『決定版!! 100km・ウルトラマラソン』
と重複する箇所が多い。残念。
しかしリタイアしたときも満足感があるとは。フルマラソンでは考えられないメンタリティだね。 金曜日 - 12 月 17, 2004フィギュアスケートの魔力 ★★★☆2001年8月アメリカ・デトロイトの球場で50人に「北米で一番有名な日本人は?」と尋ねてまわった。これが「まえがき」の冒頭の文章。「イチロー」という答えが多いかと思ったらさにあらず、イチローは3位(6票)、2位はオノ・ヨーコ(8票)。そして栄えある1位は、なんと佐藤有香! 36票。
佐藤有香……ご存知だろうか。フィギュアスケートが好きな人は、幕張の世界選手権で優勝したあの「佐藤有香」を思い出すだろうが、それにしても70%もの人が1位にあげるとは。 このように冒頭からいきなり驚きのエピソードが紹介され、次から次へと興味深い話が続く。フィギュアスケートがなぜ「フィギュア」という名前なのかとか、なぜ6点満点なのかとか、フィギュア史の話も面白い。フィギュアスケートに多少でも興味を持っている人はかなり楽しめるだろう。 現在アメリカに住む梅田香子(自身のご子息もフィギュアスケートをしているとか)から見たアメリカのスケート事情や、元選手だった今川知子の体験的フィギュアスケート論は、知らない世界をかいま見させてくれる。 今の日本の女子フィギュア界は、現在の女子マラソンなみにタレントが豊富である。次のトリノ冬季オリンピックでは活躍が期待できる。おそらく世間の耳目も集まるだろう。一足先にこの本でフィギュアスケート情報を集めるのも良いのでは。 巻末に、6種類のジャンプについて写真入りで解説しているのも親切。 火曜日 - 12 月 14, 2004生ゴミを食べてもらうミミズ御殿の作り方 ミミズコンポスト完全マニュアル ★★★★ミミズを使って生ゴミを処理する方法を非常に具体的に書いたマニュアル。
「ミミズを使って生ゴミを処理する方法」というよりむしろ「みみずの飼育方法」という感じもする。利用するというより共存するというスタンスだ(建て前だけでなく)。非常に好感が持てる。 内容も相当具体的で、ミミズコンポストをすぐ始められるくらいの知識が身に付く。疑似的に体験しているかのような気にもなる。まさにバーチャルミミズコンポスト! 巻末には、参考文献やホームページも紹介されており、さらに視野が広がる。 良い本だ。 月曜日 - 12 月 13, 2004月曜日 - 12 月 13, 2004生きてるって言ってみろ ★★☆生きてるって言ってみろ
友川かずき著 展転社 ★★☆ 異色のシンガーソングライター、友川かずきの2冊目のエッセイ集。
あまりに世界が違いすぎて、ほとんど共感できなかった。 金曜日 - 12 月 10, 2004上司は思いつきでものを言う ★★上司は思いつきでものを言う
橋本治著 集英社新書 ★★ タイトルは秀逸。中身は冗長。
俺が上司だったら「20ページでまとめてこい」って言うよ。もちろん思いつきでさ。 木曜日 - 12 月 09, 2004水曜日 - 12 月 08, 2004バーボン・ストリート・ブルース ★★★伝説のフォーク歌手、高田渡の自伝的エッセイ。
最近高田渡に興味を持っている私としては、彼のバックグラウンドなどがよく分かり楽しめた。 あまり一般向けではないかもしれない。 キーワード:ピート・シーガー、ウディ・ガスリー、添田唖蟬坊(演歌師)、山之口貘(沖縄出身の詩人) 水曜日 - 12 月 08, 2004カール・ベンクス よみがえる古民家 ★★★以前、日本の古民家修復事例のカタログみたいな本を見ていて、あまり良いものがない中で「おおっ」と目を引くものがあった。ある年の何かの賞をとった新潟の家で、なんでもドイツ人が作ったと書いてあった。その家こそが、この本の表紙に使われているカール・ベンクスの住まいなのだった。そして作ったのもこのカール・ベンクス。そんなわけで興味を持ってこの本を読んだ。ベンクス氏の作品が4軒掲載されていて、それぞれが異なる外観を持つ。またベンクス氏の古民家(というか伝統)に対する考え方も紹介されており、共感を覚える。カラー写真も豊富で楽しいつくりになっている。
月曜日 - 12 月 06, 2004木曜日 - 12 月 02, 2004木曜日 - 12 月 02, 2004緑をまとう家 我流天国 ★★☆緑をまとう家 我流天国
藤森 照信、浜田剛爾、小池雅久著、INAX出版 ★★☆ 写真集の部分は楽しめるが、最後の3氏による対談はまったくいただけない。もう独断はいいって。
水曜日 - 12 月 01, 2004住宅ローンはこうして借りなさい トクな借り方・損な借り方 ★★★☆ファイナンシャル・プランナーが書いたハウツー本だが、現在の住宅ローンの問題点などもさりげなく触れてあり面白い。
でも、長期ローンはどう考えても無謀だと思うが。 水曜日 - 12 月 01, 2004地価「最終」暴落 ☆地価「最終」暴落
立木信著、光文社ペーパーバックス ☆ ベンジャミン・フルフォードの本を出している光文社ペーパーバックスであるためかなり期待して読んだが、「ひどい」の一言だ。
今後、地価は現在の3分の1になり、日本の住宅地はほとんどがクズ土地になるから、今「住宅ローン控除」などにあおられて住宅を購入するのは自殺行為だと訴えている。まあ、この不確実な時代に長期ローンを組むのは確かに暴挙だと思うがね。 地価下落の論拠として、今でも住宅は有り余っており今後さらに空き家が増えることが示されているが、マンションや過疎地ならともかく、市街地の一戸建てはそんなに余っていないんじゃないか。その辺を区別していない適当なデータは示されているが、本当のところがよくわからん。 「こうしたデータに基づくシミュレーションは本書独特」だとか「世界で1つの本」とか自信満々だが、内容は独断に満ちている。それに「バカリーマン」、「負け組パ・リーグ」、「ジジババ」、「予備校教師でも書ける」とか差別的な表現も多い。そういう話は居酒屋でやってくれよ、オッサン。 誤解とごまかしと暴言だらけで突っ込みどころ満載の「クズ」本である。 本屋でパラパラッと見て内容がセンセーショナルだったのでつい買ってしまったが大失敗だった。 それから光文社ペーパーバックスは、英単語をやたら文章の間にはさんでいるが、こんなもの読みづらいだけだ。何の意味も見いだせない。 金曜日 - 11 月 26, 2004「できない男」から「できる男」へ ★★★★男性学を平易に紹介した本。男である自分を振り返って思い当たるフシが多く、非常に納得できる。文章も明快で読みやすい。
「男は外、女は家」のシステムを見直し、すべての男女が、家のこと、共同体のこと、育児に参加して、人間らしさを取り戻すべきだと主張する。ごもっとも。 男の特徴を分析した部分も非常に面白い。 水曜日 - 11 月 24, 2004「千年住宅」を建てる ★☆「千年住宅」を建てる
杉本賢司著、KKベストセラーズ ベスト新書 ★☆ 環境のために「千年もつ住宅」つまり「千年住宅」を建てるようにすべきだと訴え、その方法を具体的に述べる本。
しかし、本当に住宅を千年もたせる必要があるのだろうか。住の好みや方法は時代とともに大幅に変わっている。千年も経てば、方法も環境も大きく変わるので、そのために無理するよりも、今身近に入手できる素材を適切に使う方が良いのではないか。それに、本当に環境のことを考えるならば、自然に還る素材を使いながら、素材の再生にかかる時間だけその素材をもたせることが大事だと思うが。そのためには、この本で紹介されているような、ステンレス鉄筋やレンガ、コンクリートの類は極力使わないようにするのが大事だ。 根本的にあまり賢い本だとは思えない。近視眼的な本。 土曜日 - 11 月 13, 2004住まいのつくり方 ★★★建築家から見た住宅づくりの本、とでも言えば良いだろうか。それが1章から3章。
4章は「建築家と建築士」というタイトルが付いているが、建築家の手前味噌的なご託が多く、あまり感心しない。5章「私の建築家修業」と7章の「建築家を目指す人々へ」は、建築家を目指す人々とこの著者に関心のある人以外には退屈。 住宅に関心のある人は、1章から3章、それに6章を読めば十分。 全体に退屈な本だが、8章「人生は暮らすためにある」は別。この章は、エッセイ風に書かれており、内容といい文章といい、抜群に面白い。そして格調さえ感じられる。内容は、家事労働への取り組み方(特に男の)に関するもので、なかなか含蓄がある。この章だけはお奨め。 金曜日 - 11 月 05, 2004笑うカイチュウ 寄生虫博士奮闘記 ★★★☆寄生虫ブーム(?)を起こした藤田紘一郎の原点とも言うべき著書。
寄生虫のことをいろいろ教えてくれるすばらしい本。内容も面白いが、文章がまたうまい。 他の動物の寄生虫が人間に入ると大事につながることがあるのは、その寄生虫と人間との間に共存関係ができていないためで、人間の寄生虫が人間とある程度うまくやっているのは、両者間に歴史があるためだそうな。寄生虫に悠久の歴史を感じる。 金曜日 - 10 月 29, 2004火曜日 - 10 月 26, 2004水曜日 - 10 月 13, 2004薪割り礼賛 ★★★薪割りがしたくなる本。読んでいて楽しい。
薪割り名人の薪割り方法を知りたくて読んだのだが、それについては書かれていなかった(触れられてはいたが求めていたものとは全然違う)。残念。 水曜日 - 10 月 06, 2004イチロー・ルール 「イチロー」が掟だ! ★★☆イチロー・ルール
「イチロー」が掟だ!
梅田香子著、扶桑社 ★★☆ イチローが大リーグに渡った年のイチロー周辺をレポートした本。著者は、現在アメリカを拠点に活躍する、元作家(?)のスポーツライター。
月曜日 - 9 月 27, 2004シュリーマン旅行記 清国・日本 ★★★☆トロイ発掘で有名なシュリーマンの処女作は、なんと旅行記だった。それも幕末日本の。
幕末の日本のありさまが生き生きと描かれていて興味深い。このころの欧米人旅行者は、概して幕末日本に対して好意的である。その多くが「清潔で平和」であることに驚嘆し感心している。シュリーマンもその一人だ。かねてから、日本に旅行した欧米人から日本に行くよう勧められていたそうである。 シュリーマンの見た日本は、確かにおおらかで美しい。そして今の日本にその多くが失われてしまったことを再認識させる。 一方でシュリーマンは、当時の清国に対しては非常に厳しい見方をしている。本来すばらしい文化を持ちながら、政治の腐敗のため、文化もまさしく腐敗していると分析する。 凋落する大帝国と、自然と調和しながら悠然と生きる小島国。その対比も面白い。 日曜日 - 9 月 19, 2004木曜日 - 9 月 16, 2004焚き火大全 ★★★☆焚き火マニアが書いた、焚き火の本。「焚き火」が出てくる小説なども紹介されており、まさに「大全」の名にふさわしい。
本当の愛好者が書いたものは、読んでる方も同じように楽しめる。楽しさが伝わってくるのだ。 焚き火をすぐにでもやりたくなる。 日曜日 - 9 月 12, 2004アメリカシロヒトリ 種の歴史の断面 ★★★☆アメリカシロヒトリ
種の歴史の断面
伊藤嘉昭編、中公新書 ★★★☆ うちの庭木にアメリカシロヒトリの幼虫(毛虫)が大量発生したのがきっかけで読んだが、予想以上に楽しめた。
アメリカシロヒトリの生態を追う日本人学者たちの「渾身」(!)の研究が紹介されている。 アメリカシロヒトリに親近感がわくこと請け合い(わかなくていいか)。 月曜日 - 9 月 06, 2004森の生活 --ウォールデン-- ★★☆森の生活
--ウォールデン--
ヘンリー・D・ソロー著、佐渡谷重信訳、講談社学術文庫 ★★☆ 「古典的名著」。
森の生活を詩的かつ具体的に記述しているのかと思ったが、その多くは文明論だ。 共感、納得することも多いが、小生意気な若造が偉そうにご託を並べているという感も否めず。 月曜日 - 9 月 06, 2004年金のウソ 隠される積立金147兆円 ★★★☆日本の年金制度の欺瞞性を平易に記述する本。内容はセンセーショナルで、特に、百数十兆円あると言われている年金積立金が、不良債権のために数兆円分しかなくなっているという報告には、驚くやらあきれるやら(ちなみにこれは、ある団体の報告であり、著者はそこまでひどくはなかろうという立場である)。この国は予想以上に腐っている。
この本は、年金問題の入門書という位置づけで、日本の年金制度問題全般については、『年金不安 50問50答』(公文昭夫著、大月書店)が大変参考になる。 水曜日 - 8 月 25, 2004ギャンブルフィーヴァー 依存症と合法化論争 ★★★☆ギャンブル依存症の実態を追求する本と思って読んだのだが、依存症のことよりも合法化論争に重きを置いている。
ギャンブルはレジャーとして公認すべきで、公認することで収支が明朗になり、地下に潜って地下組織の資金源になることも避けられるというのが、著者の主張。また、現在の日本の公営ギャンブルの極めて高い控除率(テラ銭)も、競争のない寡占状態から生み出されたのであるから、ギャンブルの合法化で、このような異常な状態も改善できるという。ギャンブル反対者の論拠も多くはでたらめであり、一番問題になるギャンブル依存症についても、ギャンブル業者から一定の資金を集めることで対応すべきだと説く。 なかなか目新しい論旨だが、ギャンブル依存症の人間が周りにいる私としては、諸手をあげて賛成することはできないのだ。 私も、本書で紹介されている「ギャンブル(カジノ)に反対する人々」に入るのだろう。 日曜日 - 8 月 22, 2004「奇跡」のトレーニング 初動負荷理論が「世界」を変える ★★☆「奇跡」のトレーニング 初動負荷理論が「世界」を変える
小山裕史著、講談社 ★★☆ 初動負荷理論の実績は買うし興味はあるが、この本ではその内容やトレーニング方法がわかりにくい。初動負荷マシンというのも、もう少しわかりやすく紹介して欲しかった。
この本は、小山氏が経営するジムの広告の役割しか果たしていない。 日曜日 - 8 月 22, 2004世界で一番いのちの短い国 シエラレオネの国境なき医師団 ★★★☆シエラレオネの実態を、NGOの1職員の目で紹介した本。決して告発するという内容ではなく、体験談を淡々と語っている。
医療ボランティアの日常を面白おかしく描いているため、非常に読みやすい。 医療人道支援の真のあり方についても問題提起している。つまり、物資や金、医療スタッフをばらまき、しかも援助国の方法を強引に押しつけることが、本当の意味で当事国の支援になっているのだろうかという疑問である。実際、数ヶ月あるいは数年したら医師などのスタッフは自国に引き上げるため、また元の状態に戻るということにもなりかねない。これは、著者自身のテーマでもあり、この本を貫くメインテーマになっている。そのため、現地スタッフの教育が非常に大切で、医療システムを根付かせることこそが当事国の医療レベルを向上させることにつながるというのが著者の主張だ。その過程で一番重要なことは、当事国の文化を受け入れながら、作業を進めるということだ。著者は、それを現地で実践し、現地の人々の人望も集めている(ようだ)。 マスコミに取り上げられるような比較的目立つ国に数日間医者を派遣して名を売っているNGOがあり、前から胡散臭さを感じていたが、その辺りのモヤモヤも解消された。 ともすれば重くなりやすいテーマを読みやすくまとめ、しかも明確な主張を貫いている。良書である。 火曜日 - 8 月 10, 2004著作権の考え方 ★★☆著作権の考え方
岡本薫著、岩波新書 ★★☆ 元文化庁著作権課長による著作権講座。
アメリカの「ミッキーマウス法」などの、ゆがんだ状況を解説しているかと思いきや、扱われているのは基本事項だけだった。 著作権先進国と思われているアメリカは、著作権に関しては非常に遅れていて、逆に日本は、デジタルデータ、インターネットへの対応という点で、世界をリードしているらしい。日本の著作権に関する法整備は世界一だというようなことを繰り返し述べている。 こういうのを手前味噌という。 月曜日 - 8 月 09, 2004土曜日 - 8 月 07, 2004「南京事件」の探求 その実像をもとめて ★★★「南京事件」の探求 その実像をもとめて
北村稔著、文春新書 ★★★ 被害者30万人とも言われる「南京大虐殺」についての論考。
「南京大虐殺」が事実かどうかという判断の前に、30万人説がどこから出てきたか、何が出典になっているかを歴史学の立場から検討していく。 この本によると、「南京大虐殺」は、国民党中央宣伝部に関わるティンパーリーの著書『WHAT WAR MEANS』に始まるという。つまり、日中戦争中の対日宣伝の一環として出された書物が根元にあり、それが戦後の東京裁判や南京裁判で(意図的に)引用されたのだという。 被害者30万人という数字も意図的に作られたものだということを、『スマイス報告』など、当時の資料から追っていく。 南京大虐殺があったと主張する、いわゆる「虐殺派」と、なかったと主張するいわゆる「まぼろし派」の両方から距離を置いて、学術的に論じていこうというのが著者のスタンスらしい。しかし論考から導き出される結果は、「まぼろし派」のものだ。つまり、組織的な大虐殺はなく、2万人の捕虜に対する処刑の他、便衣兵の殺害、兵士の暴走による市民の殺害(つまり組織的なホロコーストではないとする)があったと結論づける。 確かに「南京大虐殺」に限っては政治的な意図も見え隠れするが、しかしだからと言って、それで日本軍が大陸で行った行為が正当化されるわけではない(そのことは著者も一応ふれてはいるが)。 このケース(つまり南京事件)だけを切り離して論じるのは、学術的には有用かも知れないが、このことから日中戦争に対して性格付けすることはできない。組織的であるかどうかに関係なく、日中戦争で残虐行為が繰り広げられたのは確かだ。たとえ、いわゆる「南京大虐殺」がなかったとしても、それがすなわち、「戦闘部分だけを突出させ、兵站線の確保による補給を重んじない日本軍特有の軍事行動の招いた悲劇である」とか、「兵站による補給を重んじない日本軍の体質は、日中戦争では日本軍を必要以上に加害者の立場に立たせた」(114ページ)と結論づけることは、日中戦争をトータルとして見た場合、正しいと言えるだろうか。1つの事実を他に敷衍して、それがさもすべてに当てはまるような方法は、あきらかに不正で、間違っている。 この本には、多分に、そういう恣意的なものが感じられる。保守主義者のバイブルになるかも知れぬ。 あくまでも「南京大虐殺」の真相を探る本であり日中戦争の性格を解明する本ではない、という態度で、心して読む必要がある。 金曜日 - 8 月 06, 2004夜回り先生 ★★★☆夜の街をまわって、うろついている子どもたちに声をかけ続ける夜回り先生こと、水谷修氏のエッセイ。
多くの子どもたちが、悲しみ、苦しみもがいてでる。それは、途上国の苦しむ子どもたちと本質的には変わらない。 「もし花を咲かせることなく、しぼんだり枯れたりする子どもがいれば、それはまぎれもなく大人のせいであり、子どもはその被害者だ。」 この本には、迷える子どもたちがたくさん出てくる。こういう現実に哀しくなる。 木曜日 - 7 月 29, 2004倭館 鎖国時代の日本人町 ★★★江戸時代、唯一の海外日本人居住地であった、朝鮮の倭館について紹介する。
前半、江戸時代に倭館が果たした歴史的な役割を紹介する。当時の貿易量のかなりの部分が倭館経由で行われていたこと、それに伴いかなりの量の国産銀が流出したことなどが示される。日本史における倭館の意義が語られ、歴史的な観点からも、非常に興味深い。 後半は、うってかわって倭館での生活の様子が語られる。こちらはこちらで、別のおもしろさがある。当時の記録がかなり残っている(江戸時代の日本は出版大国であった)ことから、その様子は具体的かつ詳細で、臨場感すらある(特に、倭館に現れた虎の退治に関する逸話など)。 江戸時代、海外に日本人居住街があったことなど、ほとんどの人が知らないだろう。その点でも画期的な本だと言える。 火曜日 - 7 月 27, 2004日本がアルゼンチンタンゴを踊る日 ★★★☆日本の、政治家、官僚、産業、ヤクザの四極構造を報告し、日本経済の破綻を予言する書。
(真の)改革派の人々が次々に謎の死を遂げている(多くは自殺に見せかけられている)と告発する。読んでいるうちに絶望感と無力感に襲われるが、それが現在の日本の現実であることは確かだ。 著者の読みが甘いと思わせる箇所も多々ある(特に後半)が、(身の危険を顧みず)政官業ヤクザの四極構造を明確に指摘した点で大きく評価できる。ただ内容自体は、続編の『ヤクザ・リセッション』の方が鋭い。 日曜日 - 7 月 18, 2004金曜日 - 7 月 16, 2004学校を捨ててみよう! 子どもの脳はつかれはてている ★★★☆ひきこもりや異常な少年犯罪は、少年の脳が疲労によって障害を受けているせい(慢性疲労症候群)であって、早急に対応しなければならない、ということを訴える小児科医師の本。
前半部の若年世代の分析については少し問題があるが、後半部の脳生理学からの各症状の分析や、教育制度に対する批判はなかなか読み応えがある。少年の問題に対する1つの(ただし非常に有力な)解釈ととらえて読むのが良い。私自身、心当たりがある点がいくつかある。 慢性疲労症候群が発症している子どもたちに対する具体的な処法も記述されている。現代の教育全般に警鐘を鳴らす真摯な本だ。 金曜日 - 7 月 16, 2004郵便局があぶない ★★郵便局があぶない
別冊宝島編集部編、宝島社文庫 ★★ 与党の票田になっていることや、財政投融資の問題を告発しているのかと思って読んでいたが、ほとんどは個別の郵便局内での問題だった(終わりの方に田中優氏の聞き書きがちょっとだけ申し訳程度に追加されている)。それはそれで面白い点もあるが、ずいぶん腰がひけてるなという印象だ。
目新しいものはあまりない。 木曜日 - 7 月 15, 2004古代通史 古田武彦の物語る古代世界 ★★★☆古田武彦が解明した古代史を通史という形で解説する講演録。
古田史観による通史がないか待望していたが、通史という点では少し物足りない。 古田史観をわかりやすくまとめたものというふうに考えると良いかも。古田史観入門者向け。 火曜日 - 7 月 13, 2004スローライフ、スローフード 「食」から考える明日のライフスタイル ★★★スローライフ、スローフードをテーマにした、9人の専門家による講演録。
この手の本によくあるように、玉石混淆であるが、後半の5人(大久保洋子、石川英輔、タイモン・スクリーチ、村上譲顕、河名秀郎)は面白い。特に、村上譲顕(NPO法人日本食用塩研究会代表理事)の塩の話、河名秀郎(ナチュラルハーモニー代表取締役)の無肥料農業の話は抜群。目からウロコだ。今後要注目。 前半の学者衆の話は、理念ばかりでつまらない。 火曜日 - 7 月 13, 2004日曜日 - 7 月 11, 2004新版 知的住まいづくり考 「住まい塾」からの提言 ★★★建築家、高橋修一のエッセイ集。伝統工法への復帰をうたう。言っていることはおおむね賛同するし納得できるが、正直目新しさはあまり感じない(ただし、高橋氏の主張が最初期のもので、私が見聞きした意見の方がその影響を受けているのかも知れない
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本書のオリジナルは83年刊)。
とはいうものの、建築家という職業が、手間が多い割りにはあまり儲かる商売ではないなど、初めて聞くことも散見する。また、原材料費の価格を下げる工夫は、今聞いても斬新である。 「もう長いこと(伝統工法を)やっていないから十二人工はかかる、慣れないことだから最低十二人工はみてもらわないと困る、と平然とした顔で言う人が多いのです。訓練不足で、未熟で、手間がかかるから金も高いでは、理屈に合わないではありませんか。」 ごもっとも。 土曜日 - 7 月 10, 2004子供をゆがませる「間取り」 家族がうまくいく家づくりの知恵 ★★☆子供をゆがませる「間取り」 家族がうまくいく家づくりの知恵
横山彰人著、情報センター出版局 ★★☆ 凶悪犯罪を起こした子どもたちの住宅を分析し、家族を分断させる間取りを考察する。
同様の本に『納得の間取り 日本人の知恵袋 日本人らしい生活空間とは』(吉田桂二著、講談社+α新書)があり、その主張するところも重なる(最後の章でリフォーム例を示しているところまで共通)が、質としては『納得の間取り』の方が高い。こちらがおすすめ。 金曜日 - 7 月 09, 2004壬申大乱 ★★★☆「九州王朝」を中心とする多元史観により、壬申の乱、柿本人麻呂の歌を分析する。しかしまだ試論の段階という印象。非常に面白い問題提起だが、今後の展開を待ちたい。
木曜日 - 7 月 08, 2004オスマン帝国 ★★★オスマントルコというと、残忍で専制的かつ野蛮な国というイメージが漂う。しかしこれは、ヨーロッパ人が一方的に作ったイメージで、実際は、異教徒に対しても寛大で、高度に組織化された軍を持つ洗練された国家だった……
ヨーロッパ人による「トルコ」像を覆し、世界の歴史からオスマントルコをとらえ直す。 火曜日 - 6 月 22, 2004日曜日 - 6 月 20, 2004アホでマヌケなアメリカ白人 ★★★★日本政府が目指しているアメリカってこんな国なんです
アメリカが理想の国だとか自由の国だとか、そんな幻想を持っているほどウブじゃないつもりだが、ここにかかれている内容は、想像を遙かに超えるものだった。 これじゃあ南米やアフリカの軍事国家と同じだ。選挙は不正だらけ、冤罪で死刑にされる人々(「最近の研究によれば、23年間(1973-95)の4578件の(死刑の)事例を調査したところ、死刑判決の7割近くに重大な誤りが見出され、再審理が行われている。また、上訴によって死刑判決が覆る率は3分の2。全体的な誤審の率は68パーセントに及んでいた。」)、大企業に支配される学校、虐げられる被差別民(黒人のこと、いまだに黒人差別はなくなってないらしい。「平均的な黒人の年収は、平均的な白人よりも61パーセントも低いのだ。この差は、1880年当時の格差と全く同じなのである!」)……。すべてが一部の金持ちをうるわせるために成り立っているというわけだ。 つまりは、金持ちの金持ちによる金持ちのための国、それがアメリカ。 この本のおかげで、今まで少しずつ見聞きしてきたアメリカの実態が、体系的にまとめられた。アメリカに幻想を持っているすべての人、必読! ついでだが、翻訳も秀逸だ。装丁とタイトルはいただけないが。 水曜日 - 6 月 16, 2004 |