アメリカ・問われる司法取引 ★★★★


アメリカ・問われる司法取引 〜刑事裁判制度の落とし穴〜(04年・米 WGBH)
NHK BS1 BS世界のドキュメンタリー
★★★★

司法取引で多くが決着するアメリカの司法制度の問題をあぶり出す意欲作。
司法取引で刑が軽くされることで、被害者の二次被害に対する恐怖感や被害者の不公正感が出てくることをテーマにしているのかと思っていたらさにあらず。あまりにひどいアメリカの司法の現状を訴えるものだった。
いい加減な捜査で逮捕される無実の貧困層の人々(多くは黒人)。一刻も早く解放されたいという彼らの気持ちにつけ込み、司法取引を持ちかける裁判官、検察官、弁護士。かれらの口車に乗って司法取引に応じたら、その後、数年間は高額の保護観察手数料が課せられる(それだけでも貧困層にとっては大ダメージ)上、市民権まではく奪される。再就職も難しい、しかも高い手数料が払えない。結果的にホームレスになったという黒人女性も番組に登場する。
一方で司法当局は、面倒な裁判をするよりもこのような方法で手数料を稼ぐ方が簡単で手っ取り早いため、司法取引を推進しているというからあきれてしまう。しかも後で冤罪が判明しても、司法取引に応じた人々に対してはいっさい清算されないという。理不尽この上ない。
また、冤罪であることから司法取引に応じなかったため、数十年の量刑を課されて途方に暮れている女性も番組に登場する。
いっさい関与していない事件で、ある日突然容疑者にされ、何日も拉致された上、今後数年間カネを払わなければ拉致し続けると脅される。まるでギャングだ。この番組に出てくるアメリカは、人権感覚に著しく欠けた国で、とてもじゃないが先進国とは思えない。

投稿日: 火曜日 - 11 月 30, 2004 04:58 午後          


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