トラック・列島3万キロ 時間を追う男達 ★★★★


トラック・列島3万キロ 時間を追う男達
NHK総合 NHKスペシャル
★★★★

さまざまな産業の合理化・経費削減のしわ寄せを受けている物流業界の現状をレポートするドキュメンタリー。
数ヶ月に渡り、あるトラック運転手の助手席に同乗して、問題を体感する。
製造業の合理化策としてジャストインタイム方式という方法が取り入れられている。在庫を一切持たずに必要な量だけ材料を工場に搬入することで、在庫管理に関わるあらゆる経費を節約できるというものである。確かにそのメーカーにとっては節約だが、結局どこかに無理をしなければやっていけないのが「合理化」策であり、その無理が物流業界に押しつけられることになる。
このドキュメンタリーで紹介されていた例では、千葉の部品工場で夕方搬出された部品を、大阪の工場で朝9:00に到着するように輸送しなければならないというものであった。ここで定められた時間はほとんど余裕がなく、渋滞に巻き込まれたら即アウトという、まさにギリギリの状態である。万一、遅れたら違約金や取引停止などということになる。ドライバーには大変なストレスがかかる(信号待ちの短い時間眠るなどということも……)。
しかも、物流業の自由化による過当競争のために、料金の低価格化が進んでいるという。物流業界が破綻を来すのも遠くないのではないか。
昨今、トラックによる事故が増えているが、一般的には、それを物流企業や運転手のせいにしてしまいがちだ。本当の問題点がどこにあるかしっかりと見据えたドキュメンタリーだ。
放送文化基金番組賞受賞作品。

投稿日: 土曜日 - 6 月 11, 2005 08:33 午前          


©