タクシードライバーの長い夜 ★★★☆


タクシードライバーの長い夜
NHK教育 ETV特集
★★★☆

タクシー業界の過当競争・価格破壊のために、生活が踏みにじられているタクシー運転手にスポットを当てるドキュメンタリー。
タクシー運転手という職業は、長時間労働で、しかも神経をすり減らす上犯罪にもさらされやすいという条件の悪い職場でありながら、近年その平均年収は300万円台まで落ちてきているという。
ことの起こりは、政府の「規制緩和」政策である。これまで台数や価格に制限がかけられていたものが、「規制緩和」政策によって、さまざまな制限が撤廃されている。あげくに過当競争・価格破壊が起こり、運転手の収入減という結果を招くことになった。
このドキュメンタリーで、「規制緩和」の担当者はインタビューに答え、「消費者が望む状態を実現することこそ正しい」と言っていた。しかし、今の状態が本当に正しいと言えるんだろうか。
公共交通機関を自由競争にさらしたらどうなるか、今までのいろいろな事例を見たら容易に想像つく。(公共性がたとえ高くても)赤字の原因となっている部分は廃止されるし、乗客の生命もないがしろにされるようになる。それが資本主義の原則というものだ。尼崎の事故を持ち出すまでもない。
タクシーの運転手たちは現在かなり追い込まれている状態で、いずれ事故の多発化などという形で影響が出るに違いない。あるいはその前に、運転手の生活の方が破綻するかも知れない。
タクシー業界を通して公共交通のあり方を問いかける、優れたドキュメンタリーだった。こういうのを是非NHK総合の「NHKスペシャル」でやってほしいんだが(総合テレビの方が人の目に触れやすいからね。ちなみにこの日のNHKスペシャルは「明治(4) 建白書にみる国づくりの夢とアイデア」。なんじゃこりゃ)。

投稿日: 土曜日 - 5 月 21, 2005 10:19 午後          


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