奈良・お水取り ★★★☆


奈良・お水取り
NHK総合 NHK特集(1987年)
NHKアーカイブス
★★★☆

今年で1254回目を迎える春の風物詩、東大寺の「お水取り」を追ったドキュメンタリー。
東大寺の「お水取り」といえば、一般的には二月堂で大松明をかざす火祭りだと思われているが、実はあの大松明の行事(篭松明上堂)はごく一部に過ぎない(昨年奈良に行ったときに、喫茶店のマスターが話していたのをそばで聞いて初めて知った)。二月堂の秘仏である十一面観音に清水をお供えする若水取りの行のことを本来「お水取り」といっていたが、いつの間にやらその前後に付随する数週間の行が「お水取り」と呼ばれるようになったらしい。「国家の安泰と万民の幸せを十一面観音に祈る法要」というのが、現在の本来の「お水取り」の定義だそうだ。
このドキュメンタリーでは、試みの湯(風呂に入って行を行う意志があることを確認する儀式:このドキュメンタリーでは2月21日)から、若水取り、達陀の行法(だったんのぎょうほう:火天と水天の舞い:このドキュメンタリーでは3月14日)に至るまで丹念に紹介している。
この行事については、風呂に入ったり堂内を走り回ったりして俗っぽい印象を受ける。また、なかなかドラマチックで、一種の火祭りという感じもする。この行に参加する練行衆(11人の僧)も、修行というよりも楽しみでやっているような雰囲気がある。この番組でも、僧たちの素顔が出てくるが、何となく嬉々としている。
紹介される映像は、火と闇のコントラストを強調しており、なかなか美しい。行の映像の間に挿入される東大寺周辺の風景も季節感を感じさせる。素材は地味だが、中身は密度が濃く、「お水取り」の記録としての価値もある。まさに保存版という名に値するすぐれたドキュメンタリーだ。NHKソフトウェアから出ている『NHK特集名作100選』にも入っている作品だ(図書館などにあるかもね)。
考えてみると、この頃のNHK特集は水準が高かったよなあ。
NHKアーカイブス「奈良・お水取り」リンク

投稿日: 月曜日 - 3 月 07, 2005 01:55 午後          


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