密着ルポ パキスタンの臓器売買 ★★★☆


密着ルポ パキスタンの臓器売買
(2004年・デンマーク DR)
NHK BS1 BS世界のドキュメンタリー
2004年モンテカルロ国際テレビ祭ゴールドニンフ賞受賞作
★★★☆

パキスタンで腎臓移植手術を受ける、デンマークの腎臓病患者に密着取材し、臓器を提供する側(売る方)と臓器を提供される側(買う方)の両方を追って、問題の所在を追求するドキュメンタリー。
臓器を提供される側である、先進国の腎臓病患者の側は、週3回人工透析を受け、透析の後は極度に疲労するという。また、先が見えない状態にも絶望しており、なんとかこの境遇を抜け出したいと考えている。
一方、パキスタンでは、多くの国で禁止されている臓器売買が認められているため、貧しさのために腎臓を売る人々が実際にかなり存在する。そして、そんなかれらの弱い立場につけ込んで、仲介手数料をしこたまポケットに入れるブローカー。腎臓を売った人に実際に渡る金額は、臓器被提供者が支払った額の1/10に過ぎない。手術後には、1週間で退院させられ、仕事に復帰することになる。多くの臓器提供者は、その後、熱や疲労のために苦しむことになり、仕事も以前ほどはできなくなるという。
臓器移植を受けた先進国の患者は、手術が成功すれば、以前の状態からは考えられないほど回復していく。このドキュメンタリーに登場した患者も、術後の経過は、予想以上に良好だった。マクロ的に見ると、先進国の患者(買う方)の不健康が、パキスタンの臓器提供者に移っていったということになる。
このドキュメンタリーでは、患者に対して「良心の呵責はないか」などの酷な質問を浴びせているが、苦しい環境にある人がその状態から抜け出したいというのはごく自然であり、それを責めるというのはあまり感心しない。もちろん、金による不健康の譲り渡しと言えるこの状態は肯定できない。
結局のところ、南北問題が解消されない限り、金持ちが貧乏人から収奪するというこのような構造はなくなることはないのだろう。このドキュメンタリーのようなミクロ的な視点では解決策は見いだせないんじゃないだろうか(もちろん、こういう現状を告発することは大事だが)。

投稿日: 火曜日 - 3 月 01, 2005 11:28 午後          


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