月曜日 - 12 月 26, 2005戦争と平和 第2部 ★★★戦争と平和
第2部:ナターシャ・ロスコワ(1965〜67年・ソ)
監督:セルゲイ・ボンダルチュク 原作:L. N. トルストイ 音楽:ヴァチェスラフ・オフチンニコフ 出演:セルゲイ・ボンダルチュク、リュドミラ・サベリーエワ、ヴァチェスラフ・チーホノフ、イリーナ・スコブツェワ、アナスタシャ・ヴェルティンスカヤ ★★★ 壮大なスケールで描かれる『戦争と平和』。ソビエト時代に、巨費を投じて作ったという。
第1部のような派手さはないが、舞踏会シーンは華麗で素晴らしい。ヴィスコンティの『山猫』を彷彿とさせる絢爛さだ。第2部になって、やっと話が動き出してきたという感じである。 人物関係が複雑でもう一つ飲み込めない箇所が結構あるが(見覚えのない人物が主要人物のようにしれっと現れるのだ)、それはそれ、流して見ることにする。 ともかく、全編ぜいたくに作られており、映画はかくありたいと思わせるものがある。無骨ではあるが、映画的なあまりに映画的な映画である。 日曜日 - 12 月 25, 2005なごり雪 ★★なごり雪(2002年・大映)
監督:大林宣彦 脚本:南柱根、大林宣彦 出演:三浦友和、須藤温子、細山田隆人、反田孝幸、ベンガル、左時枝、宝生舞 ★★ 伊勢正三作のフォークソング「なごり雪」をテーマにして、大分県臼杵市を舞台に作られた、「甘く切ないラブストーリー」らしい。
実際のところ、途中でアホ臭くなって見るのが嫌になった。まず、登場人物全員の話し言葉が異様。大林宣彦によると、「28年前(その時代が舞台になっている)の美しい日本語を再現したかった」らしい。「岸恵子や原節子が映画でしゃべっていた美しい日本語を目指した」ということだ。しかーし、この映画で使われている言葉は、岸恵子や原節子の話し言葉などではなく、むしろ書き言葉である。原節子だって「よい子を産んで」などとは言わないだろう。そんなもんでものすごい違和感があった。大林監督によると、若い人には違和感があるかもしれないがその美しさを味わって欲しいというような話だったが、そういう問題じゃないと思う。とってもヘン。たちの悪いパロディみたいだったぞ。 それに、街の描き方も嘘臭くて鼻についた。私は臼杵市には何度か行ったことがあり、確かに良い街ではあるが、ちょっと美化しすぎだと思った。映画に出てくる臼杵駅は、それはそれはレトロで、今どき珍しいなというようなたたずまいだったが、臼杵駅の駅舎は何十年も前から近代建築(というか、現在の地方の一般的なJR駅のスタイル)になっていたような記憶がある。この映画を見て臼杵を訪れた観光客は、駅に降り立った瞬間にガックリくるのではないか。街を歩いても同様である。過剰な美化はどんなもんだろうかと思う。 ストーリーもとっても安直だ。素晴らしい友人と自分を思ってくれる美女が田舎で待っていてくれるなんて、故郷を離れた男とにとってはそりゃ理想ではある(「なごり雪」というより「木綿のハンカチーフ」みたいだった)が、モチーフがちょっと古すぎる。やたらに説明的な台詞も多いし、回想を使いすぎるというのも安直な手段である。シナリオ講座などでは「登場人物が生きていない」などとよく言われるそうだが(『「懐かしドラマ」が教えてくれる シナリオの書き方』参照)、まさにその見本みたいなストーリーだった。登場人物の背景が薄っぺらで奥行きがない。 舞台になった高校が「臼杵風成高校」(もちろん架空の高校)。これを見て、私ゃ少し複雑な気持ちになった。臼杵の風成と言えば、かつて大企業の環境破壊を住民運動で阻止した漁師町だ(このあたりの事情は、松下竜一の名著『風成の女たち』に詳しい)。DVDに収録されている監督インタビューを聞く限りでは、そのあたりの事情を知った上で「風成」を使ったようだが、個人的には、こんなしょうもない映画で使うんじゃなくて『風成の女たち』を映画化したらどうですかという気持ちである(もちろん監督は他の人ね。大林氏にはプロデューサーでもやっていただくということで)。蛇足ながら、『風成の女たち』は、ノンフィクションでありながら、映像が頭に浮かんでくるような臨場感あふれる傑作である。 大林宣彦の映画は、別に毛嫌いしているわけではないが、どうもこの人は安易な映画を作ってしまうところがあって、今回もそんな感じがしたのでちょっと批判めいたことを書いた。たとえば『姉妹坂』などはその格好の例で、あれは特にひどかったと思う。これについてはまた別の機会に書いてみたいと思う。この映画で唯一救いだったのは須藤温子である。なかなか存在感のある美少女だった。そう言えば、大林映画では、十代の良い主演女優がわりに出てくる。大林氏にそういう嗜好があるのだろうか…… 追記1:ちょっと前に、あるCM(痴呆のコマーシャル……スポンサーは不明……エーザイ?)で、角替和枝(この映画の母役、左時枝に何となく似ている)が、故郷を離れる息子を臼杵駅で見送るというシーンがあったが、もしかしてこの映画とタイアップしていたのだろうか。同じようなシーンが映画に出てきた。 追記2:今ネットで調べたところ、映画に出てくる駅のシーンは、上臼杵駅と重岡駅でロケしたんだそうな。 土曜日 - 12 月 24, 2005怪談 ★★☆怪談(1965年・東宝)
監督:小林正樹 原作:小泉八雲 脚本:水木洋子 撮影:宮島義勇 美術:戸田重昌 音楽:武満徹 出演:三国連太郎、新珠三千代、仲代達矢、岸恵子、中村嘉葎雄、丹波哲郎、志村喬、中村翫右衛門、中村雁治郎 ★★☆ 小泉八雲の『怪談』から「黒髪」、「雪女」、「耳なし芳一」、「茶碗の中」の4話を映画化したオムニバス。
リアリズムより幻想的な表現を重視した美術で、演劇のようである。どの話もほとんどがセットで撮られている。スタジオはかなり大きく、セットも金がかかっていることがわかる。だが、こういう人為的な演出は好みの別れるところだと思う(私はあまり好きでない)。 話自体は有名なものが多く意外性はない(「茶碗の中」は少し珍しい)。展開もまったりしているのであまり緊迫感がない(怖い場面もあるが)。昔のお化け屋敷みたいな感じだ。 木曜日 - 12 月 22, 2005戦争と平和 第1部 ★★★☆戦争と平和
第1部:アンドレイ・ボルコンスキー(1965〜67年・ソ)
監督:セルゲイ・ボンダルチュク 原作:L. N. トルストイ 音楽:ヴァチェスラフ・オフチンニコフ 出演:セルゲイ・ボンダルチュク、リュドミラ・サベリーエワ、ヴァチェスラフ・チーホノフ、イリーナ・スコブツェワ、アナスタシャ・ヴェルティンスカヤ ★★★☆ 壮大なスケールで描かれる『戦争と平和』。ソビエト時代に、巨費を投じて作ったらしい。
ハリウッド版の『戦争と平和』がみすぼらしく安っぽかったのと好対照を示している。堅牢であまりけれんのない演出だが、カメラがあちこちを大きく移動するのはなかなか爽快。金がかかってるなと思わせる贅沢さである。衣装や大道具も贅沢で、戦場シーンもものすごい(相当なエキストラを動員したのだろう)。 話の進展は、大河のようにゆったりしており(文字通り大河ドラマ!)、途中眠くなる。のんびりしているときに落ち着いてゆっくり見たい映画だ。 月曜日 - 12 月 19, 2005柳川堀割物語 ★★★☆柳川の水路が荒れ果て、コンクリートで覆うという話が出て、そうしたところ、ある役人(広松伝という人)が水路を清掃し始めることでやがて市民を巻き込み、荒れた水路が徐々に以前の姿を取り戻しつつある……という話を以前新聞で読んだ。
このドキュメンタリー映画では、そのあたりも詳細に扱っている(事実はさきほどの話とは多少異なる)が、柳川の水路のさまざまな局面を多面的に扱っており、さながら柳川百科事典のような趣がある。全11章構成で、対象の掘り起こし方が、映画というより書籍に近い。特にDVD化されて、各章にランダム・アクセスできるようになったため、マルチメディア百科としての価値がこれまで以上に高くなっている。 冗長な章がある上、しかも内容が複雑すぎてついて行けない箇所もある。だが、柳川堀割の原理や歴史など、内容は多岐に渡る上、非常に濃密である。映像も美しい。 『千と千尋の神隠し』の作者(宮崎駿)の頭の中には柳川の水路があったのではないか(ハクのことね)とふと思った。 日曜日 - 12 月 18, 2005牛泥棒 ★★★☆牛泥棒(1943年・米)
監督:ウィリアム・A・ウェルマン 撮影:アーサー・ミラー 出演:ヘンリー・フォンダ、ダナ・アンドリュース、アンソニー・クイン、フランシス・フォード、メアリー・ベス・ヒューズ ★★★☆ 76分の短い西部劇ながら、なかなか密度が濃い。単なるドンパチの西部劇ではなく、むしろ法廷劇に近い。
ストーリー主体の映画であるため、内容はちょっと明かせないが、終始スリリングである。いかにもアメリカ的で、こういうところは、良い面も悪い面も今のアメリカが引きずっている。現政権の縮図のようでもある。ちなみにこの映画は、実話に基づいているそうだ。ヘンリー・フォンダは、相変わらず「アメリカの良心」を演じている。 日曜日 - 12 月 18, 2005アラン ★★★☆長編ドキュメンタリーの古典的名画。
アイルランドのアラン諸島に生きる人々の厳しい生活を描く。人々は、生きるために働き食うために闘う。自然の過酷さをものともせず、岩山にへばりついて生きている。 アラン諸島の自然も豪快で、カメラがよく捉えている。音楽効果も秀逸で、モンタージュが素晴らしい効果を上げている。エイゼンシュタイン風に言うならば、垂直モンタージュというところか。垂れ流し風の映像でありながら、見る方に相当な緊張感を強いる。ドキュメンタリーの古典という表現がぴったりである。 ただしドキュメンタリーとは言いながらも、やらせや演出が多少入っているようで、現在の発想でドキュメンタリーとして捉えると少し違和感があるかも知れない。そういう向きは、ドキュメンタリー風のドラマとして見ればよい。そのあたりは臨機応変にどうぞ。 土曜日 - 12 月 17, 2005放課後 ★★★放課後(1973年・東宝)
監督:森谷司郎 脚本:井手俊郎 主題歌:井上陽水 出演:栗田ひろみ、地井武男、宮本信子、宇津宮雅代、篠ヒロコ ★★★ アイドル映画としてはよくできている。
だがアイドルの栗田ひろみがあまり魅力的に撮られていない。アイドル映画を強引に自分の領域に持ってきたのか、森谷司郎? なんでも、公開時、マーク・レスターの『小さな恋のメロディ』と同時上映されたらしい。すごい組み合わせだ。 金曜日 - 12 月 16, 2005Jazz seen / カメラが聴いたジャズ ★★☆Jazz seen /
カメラが聴いたジャズ(2001年・独)
監督:ジュリアン・ベネディクト 出演:ウィリアム・クラクストン、ペギー・モフィット、チコ・ハミルトン、ヴィダル・サスーン、デニス・ホッパー ★★☆ ウィリアム・クラクストンのこれまでの経歴を描いたドキュメンタリー映画。
ウィリアム・クラクストンという人は、何でもジャズの歴史を変えた写真家だそうな。この映画では、当人のインタビューの他、ジャズ・ミュージシャンや他分野の芸術家のインタビューを交えながら、クラクストンの作品や生き様を振り返る。一部、再現ビデオ風の映像もある。もちろん、クラクストンの写真も多数登場する。 ただ、静止写真(家)を活動写真で表現するのは、正直あまり良い試みではないと思う。終盤近くになってかなり眠くなった。この映画に限らず、他の写真を扱ったドキュメントでも同じことが言える。写真の媒体は、動く映像より、本の方が格段に良いのではないかとあらためて思った。 火曜日 - 12 月 13, 2005街角 桃色の店 ★★★街角
桃色の店(1940年・米)
監督:エルンスト・ルビッチ 原作:ニコラウス・ラズロ 脚本:サムソン・ラファエルソン 出演:ジェームズ・スチュワート、マーガレット・サラヴァン、フランク・モーガン、ジョセフ・シルドクラウト ★★★ エルンスト・ルビッチの小粋なラブ・ストーリー。『ユーガットメール』は、この映画のリメイクだそうな。
すれちがいやボタンの掛け違いでドタバタ喜劇が繰り広げられる。最近の映画のように人がやたら殺されたりしないので、安心して楽しめる。 土曜日 - 12 月 10, 2005人間の條件 完結篇 ★★★★☆ 人間の條件
完結篇(1961年・松竹)
監督:小林正樹 原作:五味川純平 脚本:松山善三、小林正樹 撮影:宮島義勇 出演:仲代達矢、川津祐介、高峰秀子、中村玉緒、内藤武俊、岸田今日子、金子信雄、新珠三千代 ★★★★☆ 小林正樹の大作映画、『人間の條件』の3部構成の完結編。
前の第一部/第二部がシャバ編、第三部/第四部が軍隊編、そしてこれが敗走および捕虜編。 どこにいても、周囲とぶつかり合う、まっすぐな人間、梶。ここでも、強力なリーダーシップを発揮しながら、周囲の姑息な人間たちとぶつかっていき、同時に超人ぶりを発揮する。まったく息もつかせぬ面白さだ。 しかし日本映画にこれほどの作品があったことにあらためて感心した(見たのは今回で2回目だが)。迫力といいリアリズムといい、メッセージ性といい、文句の付けようがない。日本映画を代表する名画と言える。小林正樹は、黒澤明や小津安二郎ほど、個人として高い名声が与えられていないようだが、『切腹』や『東京裁判』を見ても、ただ者でないことは容易に察しが付く。これから個人的に注目したいと思っている。 金曜日 - 12 月 09, 2005人間の條件 第三部望郷篇/第四部戦雲篇 ★★★★ 人間の條件
第三部望郷篇/第四部戦雲篇(1959年・松竹)
監督:小林正樹 原作:五味川純平 脚本:松山善三、小林正樹 出演:仲代達矢、新珠三千代、佐田啓二、渡辺文雄、安井昌二、桂小金治、藤田進、川津祐介 ★★★★ 小林正樹の大作映画、『人間の條件』の3部構成の第2部。
前の第一部/第二部がシャバ編で、これが軍隊編。まったく理不尽で不快きわまりない軍隊(関東軍)の様子が赤裸々に描かれている。先日見た小津安二郎の映画で、「戦争中はくだらないヤツが威張り散らしていた」というような台詞が出てくるが、この映画でも本当にくだらないヤツが威張り散らしている。非常にリアルだ。 原作者も監督も軍隊体験者だそうで、そりゃリアルなわけだ。終わり近くの戦闘シーンは、ド派手な戦争映画と違って激しいドンパチもないが、たまにニュース映像で目にするイラク、アフガン、ユーゴなどの戦場の感じと非常に良く似ており、逆に臨場感というかリアルさを感じた。 約3時間、まったく飽きることなく引っ張り回される。戦争に対する想像力を欠いた、好戦的な若者にも見てほしい映画だ。 水曜日 - 12 月 07, 2005ハウルの動く城 ★★★☆ハウルの動く城(2004年・スタジオジブリ)
監督:宮崎駿 原作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 脚本:宮崎駿 音楽:久石譲 声の出演:倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、加藤治子、原田大二郎 ★★★☆ お馴染み、宮崎駿のアニメ。
相変わらず、おもちゃ箱をひっくり返したようなごちゃごちゃさというか、猥雑さというか……よく作り込んでいる。ただ、これまでの作品と似通った部分が結構出てきて、『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』を彷彿とさせるようなシーンが多かった。また、ストーリーも少しパターン化していて、起承転結に忠実なのは変わっていない。途中、ハウルの正体(?)が明らかになるあたり、複雑でついて行けなくなった。『千と千尋の神隠し』でもそういう箇所があり、2回目に見たときに納得したが、あれと同じようなパターンか。やたら飛ぶシーンが多いのも宮崎アニメらしい。 もう1つ、声優の起用に疑問を持った。『となりのトトロ』でもそうだったが、声の主の顔が浮かぶような起用はどうかと思う。倍賞千恵子の娘役はいかがなものだろうか。木村拓哉も声がくぐもっていて、声優としてはパッとしない。美輪明宏は、登場人物とイメージが少し重なっていたこともあり非常に良かった。『もののけ姫』以来の起用だが、前作でも存在感があり、その辺が評価されてのことか。 トータルで見て、『千と千尋の神隠し』のレベルからは少し落ちるかなという感じ。楽しめるには楽しめるが。 そうそう、相変わらず映像はキレイで素晴らしいの一言です。 火曜日 - 12 月 06, 2005あこがれ ★★★☆あこがれ(1966年・東宝)
監督:恩地日出夫 原作:木下恵介 脚本:山田太一 音楽:武満徹 出演:内藤洋子、田村亮、新珠三千代、加東大介、賀原夏子、小沢昭一、乙羽信子、沢村貞子、林寛子 ★★★☆ 『白馬のルンナ』の内藤洋子の初主演作だそうな。単なるアイドル・プログラム・ピクチャーかと思いきや、なかなか濃厚な映画である。
それもそのはず、スタッフ、キャストが今見ると大変豪華。ただし脚本の山田太一は劇映画第2作目で駆け出し、音楽の武満徹もまだまだルーキーだ。キャストの田村亮や乙羽信子もまだまだ若い。林寛子なんかまだ子供(子役)だ。皆その後出世したということだ。 この話の基になっているのは、テレビ・ドラマ、『記念樹』(1966年4月放送)である。『記念樹』は、木下恵介劇場の第1作で、木下恵介が初めてテレビに進出し、演出や脚本を手がけた、まさに「記念」碑的なドラマだ。孤児院を舞台にしており、基本的に1話完結で、さまざまな脚本家がそれぞれの話を担当している。木下恵介の弟子であった山田太一も、デビューしたばかりであったがこれに参加し、何本か書いている。ちなみにこのドラマには、田村亮の兄の田村正和や、原田芳雄も出演していた。この映画も、言ってみれば『記念樹』の中の1本みたいなノリである。 アイドルの内藤洋子が好演しており、同時にアイドル映画的な魅力も醸し出している。演出も割合抑えたものになっており、他の昔のアイドル映画みたいな恥ずかしさはない。脚本もしっかりしており、才能の片鱗が見受けられる。もっとも、山田太一作品ならではで多少の理屈っぽさはある。アイドル映画でもこれだけの硬い表現が出て許されるという…… まあ当時の日本人は、今よりはるかにレベルが高かったということだろう。 金曜日 - 12 月 02, 2005秋日和 ★★★秋日和(1960年・松竹)
監督:小津安二郎 原作:里見弴(とん) 脚本:野田高梧、小津安二郎 撮影:厚田雄春 出演:原節子、司葉子、岡田茉莉子、佐田啓二、佐分利信、中村伸郎、北竜二、笠智衆、沢村貞子、三宅邦子、渡辺文雄、三上真一郎、高橋とよ ★★★ 小津安二郎おなじみの嫁入りばなし。原作ものであるせいか、猥談ひとつ取ってみても下品でいただけない(「ヘッドシザースはないだろ」と思ったよ)。大道具や調度、衣装などは、相変わらず素晴らしいが……。全体的に「作り物」の感じが非常に強くあざとさを少し感じた(小津映画は大体「作り物」の感じが強いが、あざとさを感じることはあまりない)。場面展開も少しわざとらしいような……。まとまりに欠けていたせいか?
岡田茉莉子演じる「佐々木百合子」は、なかなか面白い突き抜けたキャラクターで、この話に花を添えていた。 木曜日 - 12 月 01, 2005極楽特急 ★★★★極楽特急(1932年・米)
監督:エルンスト・ルビッチ 原作:ラズロ・アラダール 脚本:サムソン・ラファエルソン 出演:ミリアム・ホプキンス、ケイ・フランシス、ハーバート・マーシャル、チャーリー・ラグルス、エドワード・エヴァレット・ホートン ★★★★ ルビッチと言えば、小津安二郎はじめ戦前の日本の映画人があこがれた存在だが、今回この映画を見てそれがよくわかった。
テンポといい、雰囲気といい、役者の魅力といい、申し分ない映画だ。 時間が少し空いたので、暇つぶしに見てみるかというぐらいの感覚で見始めたのだが、ぐんぐん引き込まれて、見終わった後心地良い爽快感が残った。笑い、恋愛、サスペンス(?)などいろいろな要素を凝縮し、簡潔な構成の中に盛り込んでいる。全編軽いタッチで、ともすれば軽い映画と受け取られやすい(まあ、軽い映画ではあるが)が、密度が非常に高い。映画らしい映画である。 水曜日 - 11 月 30, 2005南部の人 ★★★ジャン・ルノワールがアメリカに渡って撮った代表作(らしい)。
米国南部の貧しくて厳しくも人情深い生活を扱っているが、ジョン・フォードの『怒りの葡萄』のような、社会の矛盾をついた告発ものではない。もう少しおおらかでのんびりしたところがある。『大草原の小さな家』に近いか……。主人公は確かにいろいろな苦難を突きつけられるが、どこか牧歌的である。それだけに、見ていて少し物足りなさを感じた。芝居として完結しているような感じで、わき出すものがないというか……。ちょっと退屈した。 動物を狩って、家族全員でむしゃぶりつくように食うシーンは、空恐ろしくもあった(喜びに満ちたシーンのようだが)。アメリカ人ってのは野蛮だなと素直に感じた。 月曜日 - 11 月 28, 2005第三の男 ★★★☆第三の男(1949年・英)
監督:キャロル・リード 原作:グレアム・グリーン 脚本:グレアム・グリーン 出演:ジョセフ・コットン、アリダ・ヴァリ、オーソン・ウェルズ、トレヴァー・ハワード、バーナード・リー ★★★☆ この映画も見るのは2回目だが、前よりも印象が強かった。
名画中の名画だから今さらいろいろ言う必要もないのだろうが、非常に密度が濃く、映像も見所が多い。大変贅沢な、映画らしい映画である。 土曜日 - 11 月 26, 2005人間の條件 第一部純愛篇/第二部激怒篇 ★★★☆人間の條件
第一部純愛篇/第二部激怒篇(1959年・松竹)
監督:小林正樹 原作:五味川純平 脚本:松山善三、小林正樹 出演:仲代達矢、新珠三千代、山村聡、淡島千景、石浜朗、宮口精二、小沢栄太郎、有馬稲子、安部徹 ★★★☆ 小林正樹の大作映画、『人間の條件』の3部構成の第1部。第一部から第六部まで全部で9時間以上にもなる。まさに大作。
声高に反戦を叫ぶのではなく、日中戦争の現実を正面から突きつける。人間らしく生きようとする実直な人間、梶(仲代達矢)に対して、現実によって次から次へと難題が突きつけられる。『第三部/第四部』、『第五部/第六部』ではさらに悲惨な現実が突きつけられることになる(20年前、名画鑑賞会で3日がかりで全編見たことがある)。 演出も手堅く、古臭い演技も多少あるが、全体的によくまとまっている。 満州の壮大な風景や、よくできたセットが、スケール感を出している。当初、ロケを大陸でやったのかと思っていたほどだが、実は北海道と信州、九州だったのだ……。 金曜日 - 11 月 25, 2005彼岸花 ★★★☆彼岸花(1958年・松竹)
監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 撮影:厚田雄春 出演:佐分利信、田中絹代、有馬稲子、久我美子、佐田啓二、浪花千栄子、山本富士子、笠智衆、渡辺文雄、中村伸郎、北竜二、高橋とよ ★★★☆ 小津安二郎初のカラー作品。
『秋刀魚の味』のモチーフになる素材が詰まっている。たとえば主人公を中心とする悪友3人(佐分利信、中村伸郎、北竜二)が飲み屋の女将(高橋とよ)をからかう場面。佐分利信が笠智衆に変わったら『秋刀魚の味』のシーンになる。座敷での中村伸郎、北竜二の座る場所まで一緒で、もちろん飲み屋のつくりも一緒(飲み屋の名前も一緒だったような(注))。嫁入りのモチーフ自体も似ている(扱い方は多少異なるが)。『秋刀魚の味』は『彼岸花』の焼き直しということなのだろう。 前に見たときはあまり感じるところがなかったが、今回はかなり楽しめた。調度や演出に凝りまくっているというのがよくわかるし、映像も安定しているため、見ていて心地良い。人同士のつながりも不快さがまったくなく(頑固オヤジの佐分利信にしたってそうだ)、楽しくなる。 この映画でもっとも目立ったのは、浪花千栄子と山本富士子が演ずる、京都の旅館の女将親子で、浪花千栄子の「大阪のおばはん」ぶり(京都人の設定だが)に大変リアリティがあり、しかも映画をぶちこわしにするほど下品ではなく、絶品である。山本富士子演ずる娘も、いずれはこういう「大阪のおばはん」になるだろうと思わせるキャラクターで、ユーモラスで、魅力的だ。 小津映画は贅沢だ……とあらためて感じながら見ていた。 注:調べてみたらやはり一緒でした。「若松」。『秋日和』にも出てくるそうです > 「若松」と高橋とよ。ただし『秋日和』では、高橋とよは 「若松」の女将ではありません。 火曜日 - 11 月 22, 2005麦秋 ★★★『東京物語』と並んで小津安二郎の傑作と目される映画だが、もう一つピンと来なかった。悪くはないが、あまり感情移入できないというか……。
笠智衆と子どもたちの親子関係はこの後『お早よう』へ、原節子の嫁入りばなしは『彼岸花』、『秋刀魚の味』へと展開していくことになる。いわば原点となった映画。このあたりの作品から小津調が出てくるようだ。 ちなみに東山千栄子と笠智衆は、この映画では親子の役だが、『東京物語』では夫婦の役になる。でもあまり違和感がないのは不思議。 日曜日 - 11 月 20, 2005早春 ★★★★小津映画には珍しく事件が起きる(と言っても大した事件ではないが)。珍しく緊迫感がある。若々しさがあって良い。まさに「早春」のイメージ。
岸恵子が抜群によろしい。『ローマの休日』のヘプバーンのようなみずみずしさがある(と言ったら言い過ぎか)。でもちょっと悪女。その辺がまた良い。小津安二郎も、岸恵子がいたく気に入ったらしく、次回作で起用する予定だったのが、デヴィッド・リーンに先に持って行かれたらしい。この映画も見るのは2回目だが、前に見たときより、はるかに楽しめた。 ちなみに主演の2人(池辺良と岸恵子)は豊田四郎の『雪国』でも競演している。 日曜日 - 11 月 20, 2005宗方姉妹 ★★☆小津安二郎が初めて東宝で撮った作品。
晩年の小津調の映画とは雰囲気がかなり異なる。むしろ、木下恵介や成瀬巳喜男を思わせるような演出だ。それに内容が総統暗い。原作を意識しすぎているせいかそれとも東宝で撮ったせいか、台詞もあまり面白みがない。 心地よさが画面からしみ出すような、あの独特の小津調が出てくるのは、もう少し後のようだ。 高峰秀子と上原謙が好演。ちなみに田中絹代と上原謙は『愛染かつら』のコンビ。 それから、読み方だが「むなかたしまい」かと思いきや「むねかたきょうだい」と読ませるらしい。ちなみに『小早川家の秋』は「こはやがわけのあき」(「こばやかわ」ではない)。 土曜日 - 11 月 19, 2005秋刀魚の味 ★★★★☆秋刀魚の味(1962年・松竹)
監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 撮影:厚田雄春 出演:笠智衆、岩下志麻、佐田啓二、岡田茉莉子、三上真一郎、東野英治郎、中村伸郎、北竜二、吉田輝雄、杉村春子、岸田今日子、杉村春子、加東大介 ★★★★☆ 小津安二郎の遺作。この映画を見たのは、今回で4回目か5回目だが、何度見ても面白いし、心地良い。愉快ッ、愉快ッ!(ここらへん東野英治郎風)
小津安二郎の最高傑作であり、集大成と言っても過言ではあるまい。 前回見てから10年くらい経っているが、こちらも年を経てきているせいか、これまでと違ったところに目が行った。最初見た(20年以上前)とき、岩下志麻の横顔のショット(駅のホームのシーン)で、(吉田輝雄演じる)三浦に気があるなと気付いた(このあたり、小津安二郎の表現のすばらしさ)が、今回はこのシーンに限ってはあまりぴんと来なかった。年のせいか……。とは言え、至る所にこういう上品な表現がちりばめられている点、やはり小津映画の最高傑作と私が考えるゆえんでもある。以前、小津の評伝を読んでいたら、「客が気付かなくても良いから、描きすぎないように心がけていた」というような記述があった。わかる人だけわかれば良いということか……。 日曜日 - 11 月 13, 2005丹下左膳餘話 百萬兩の壺 ★★★★☆天才、山中貞雄が監督した、現存する3本の映画のうちの1本。
豪傑丹下左膳が、生活感の漂う、コミカルな役回りで登場する。しかも、当たり役の2枚目スター、大河内傳次郎が演じるというのだから、当時の意外性は、相当なものだっただろう。泉雅之のマンガで、ウルトラマンが女ウルトラマン(ウルトラよしこさんだったか?)とデートしたり、便所できばったりするのがあったが、ああいった感じに近いかもしれない……。 しかも、単に意外性を狙っただけでなく、ストーリーが実によく練られていて、見ていて感心することしきり。『河内山宗俊』もそうだったが、この山中貞雄と三村伸太郎のコンビは、映画のストーリーテラーとしては、日本の映画史で屈指ではないかと思わせるものがある。 沢村国太郎の演技が序盤かなりわざとらしかったが、本物の芸者、喜代三の小唄(?)も入っていてなかなか贅沢。くすぐりも多い。大河内傳次郎の殺陣も迫力あり、スリリングな展開もある。サヨナラ満塁ホームランのような痛快な映画で、山中貞雄の天才がいかんなく発揮された作品。 ちなみに、原作者の林不忘は、この映画にたいそう立腹したそうだ。 木曜日 - 11 月 10, 2005河内山宗俊 ★★★★天才、山中貞雄が監督した、現存する3本の映画のうちの1本。
見るのは今回で2回目だが、前回よりも濃密に感じた。そしてストーリーの密度が高いのにビックリ。出血大サービスのシナリオだ。息もつかせぬ展開で、テンポが抜群に良い。 河内山宗俊のネタは歌舞伎の狂言が有名だが、以前歌舞伎で見たときはどうにも間延びしていて、しかも河内山の悪どさが好きになれなかったが、この映画の河内山は魅力的な人物になっている。あの話をここまで持ってくるという脚本家の力に舌を巻く。そういえば『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』でもこういう翻案をやっていて成功している。すごい才能だ。 演出のうまいのは言うまでもない。登場人物が非常に魅力的だ。あちこちにくすぐりがちりばめられており心地良い。 貧民窟のようなごちゃごちゃしたセット、夜店の照明の美しさ(モノクロなのに)、和服の着こなし(ちょっとだらしなくてリアル)など、至る所に目を見張る箇所がある。映画としての完成度の高さに感服した。 原節子の演技が少し古くさくていただけなかったが、これもある程度狙った演出なのかも知れない。 土曜日 - 11 月 05, 2005小早川家の秋 ★★★★小早川家の秋(1961年・東宝)
監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 撮影:中井朝一 出演:中村雁治郎、原節子、司葉子、新珠三千代、小林桂樹、森繁久彌、浪花千栄子、団令子、加東大介、山茶花究、宝田明、藤木悠、杉村春子、笠智衆 ★★★★ 松竹の監督、小津安二郎が東宝で撮った映画。
見るのはこれで二度目で、前回はあまり好印象を持たなかったが、今回は絵の美しさに感心した。きれいな映像というだけではなく、日本の風物、景観が良く表現されていて、懐かしさがこみ上げる。さりげなく撮ったような京都の町並みもはなはだ美しい。今でも京都の花見小路あたりにわりと残っているような風景だが、ここに写っている絵は印象が全然違う。 それに、登場人物の立ち居のすばらしさ。立ち居については前の『浮草』のところでも書いたが、この映画では単に立ち居が美しいというだけでなく、登場人物のキャラクターにあわせた立ち居が表現されているように感じた。この辺の表現は、ちょっと歌舞伎を彷彿とさせる。そんなわけで歌舞伎役者の中村雁治郎が抜群に良い味を出している。小津の映画で彼が出るのは『浮草』とこれだけだが、大映の役者を東宝まで引っ張ってくるという小津の思い入れがよくわかるというものだ。ひょうひょうとしたおかしみが出ていて、コロコロ変わるえびす顔や怒り顔などの表情の変化も楽しい。 演出も、他の小津映画以上に様式的である。原節子と司葉子が並んで話をするシーン(いくつかある)なんて、やり過ぎじゃないかと思うくらいだ。この辺も歌舞伎的である。東宝でちょっと実験してみたという感じなのだろうか。 全編に渡り、登場人物たち(大人)の魅力や懐かしい風景があふれていて、見ている側が子供に帰り大人たちの挙動を目の当たりにしているかのような錯覚さえ覚える。小津映画のローアングルのカメラ目線が子供の視線を表現しているなどと言われることがあるが、この映画ほど、それを感じたことは今までなかった。 月曜日 - 10 月 31, 2005イヴの総て ★★★☆イヴの総て(1950年・米)
監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ 脚本:ジョセフ・L・マンキウィッツ 出演:ベティ・デイヴィス、アン・バクスター、ジョージ・サンダース、ゲイリー・メリル、マリリン・モンロー、ヒュー・マーロウ ★★★☆ 芸能(演劇)界のおどろおどろしい実態を描いたドラマ。
去年か一昨年くらいに1回見ているようだが、見たこと自体をまったく憶えておらず(こういうのは初めてだ)、見ている途中でそのことに気がついた。なかなか良くできた映画だが、見終わった後は少し不快感が残る。題材が題材だけにしようがないが。 有名な演劇の賞で女優賞を受賞したイヴ(アン・バクスター)の授賞シーンから始まる。アカデミー賞の授賞式でおなじみの、例のスピーチが始まる。「私を見出してくれた○○さん、すばらしい脚本を提供してくれた○○さん、陰で支えてくれた○○さん、感謝の言葉もありません」ってヤツ。実際に、アカデミー賞の授賞式を見ていたりすると、外部の人間から見ていてもかなり空々しく感じるものだが、この映画で描かれているのはこの言葉の裏の世界。空々しさもひとしおである。 この映画は、アカデミー賞6部門受賞しているので、実際の授賞式でもこういったスピーチが行われたはずだが、どうだったのだろうか。今度調べてみよう。残念ながら主演女優賞と助演女優賞は獲得していない。アン・バクスターに賞を与えて、実際の授賞式でスピーチさせるという発想は審査員にはなかったようだ(なんでも、ベティ・デイヴィスとアン・バクスターのどっちを主演にするかでもめたためらしい。このあたりも映画のテーマと重なっておもしろい)。 マリリン・モンローが端役で出ていて、なかなか存在感を示している。この映画を通じて「イヴ」になったというオチまで付いた。 水曜日 - 10 月 26, 2005タカダワタル的 ★★★☆先頃死んだ高田渡を題材にしたドキュメンタリー映画。
冒頭に1970年のフォークジャンボリー出演時の映像が出てきて、若くて生意気そうでちょっとイカした(死語)姿を拝むことができる。その後出てくるのは、どっぷりアルコールに浸かった、老人然とした今の高田渡の姿だ(実際は55歳だが、55には見えないほど)。 この映画の核になるのは、下北沢、ザ・スズナリのライブ映像で、スズナリライブで始まりスズナリライブで終わる(他にも京都の拾得、大阪の春一番などのライブも織り込まれる)。ライブはさながらジャズのライブのよう(実際に坂田明のサックスも登場)で、かなり盛り上がる。高田渡の演出力の高さが発揮されており、このドキュメントを見ていると、現場に居合わせているような高揚感も得ることができる。 ライブ映像の間には、高田渡の日常を追った映像が挟まれる。ライブでも大分アルコールが入っていたが、日常でもずっと酒浸りである。ただのノンベエのジイサンだ。こういう生活をしていればろくな死に方ができなかっただろうことは断言できる。実際には公演終了後発作で死んだらしいが、本人にとっては良い死に方だったのだろうと映像を見ながらあらためて思った。 ドキュメンタリーとしてもなかなか見せ方がうまく、高田渡の人となりが余すところなく表現されている。65分間まったく飽きずに、現代の吟遊詩人、高田渡の魅力を堪能できる1本。タカダワタル的酒と歌の日々…… 金曜日 - 10 月 21, 2005モーターサイクルダイアリーズ ★★★モーターサイクルダイアリーズ(2003年・英米)
監督:ウォルター・サレス 原作:エルネスト・チェ・ゲバラ、アルベルト・グラナード 脚本:ホセ・リベーラ 出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ミア・マエストロ ★★★ キューバ革命の英雄、エルネスト・チェ・ゲバラの日記を題材に、彼の若き日の旅を描いたロード・ムービー。
以前、『ゲバラ日記』という本を読んだのだが、あまり記憶に残っていない。キューバ革命の頃やコロンビアで追いつめられたあたりの印象は残っているが、もしかしたら他の本で読んだ箇所なのかも知れない。 この映画も、美しく雄大な南米の風景や屈託のない人々が次々と登場し、若者の青春群像がよく描かれているが、何かもの足りない。特に不満はないのだが。日記は映画の題材になりにくいということか。 金曜日 - 10 月 21, 2005浮草 ★★★★☆松竹の監督、小津安二郎が大映で撮った異色の映画。見るのはこれで三度目だ。実は1934年に自身で撮った『浮草物語』のリメイクである。だが、できは断然こちらの方がよい(と思う)。
なにしろ、役者陣が素晴らしい。それに宮川一夫のカメラワーク! 常に小津とコンビを組んでいる厚田雄春ではないので、いつもと違う雰囲気も若干あるかも知れない。そのためかキネマ旬報のベストテンでは、『浮草物語』が1位であったにもかかわらず、こちらは10位以内にも入っていない。しかし、この映画が、小津安二郎の最高傑作の1つであることは疑いのないところだ。 構図も非常におもしろい。最初のありきたりの数カットでさりげなくウィットを見せるあたり、なかなかうならせる(同時に笑えるが)。 他の小津映画にまず出ることがない大映の俳優陣、京マチ子、若尾文子、川口浩も新鮮だ。この時代の有名監督は、どうしてこうも役者を美しく撮れるのか不思議なくらいだ。豊田四郎の『甘い汗』を見たとき、京マチ子と佐田啓二が並んで歩く後ろ姿にほれぼれとしたが、そういう立ち居の美しさは、この映画でもさりげなく表現されている。 映像については、他の小津映画以上に感性的な映像表現が多いように思う。押しつけがましさがなく心地良い。 雨のシーンは大変インパクトがあり、最初に見たときから忘れることができない。忘れられない台詞も結構ある。シナリオも洗練を極めている。心地良さが後々まで残る、何度も見たい映画である。 水曜日 - 10 月 19, 2005十二人の怒れる男 ★★★★☆この映画、見るのは3回目だが、何度見ても、その完成度の高さにうならされる。
ともすればややこしくなって、理解が追いつかなくなることが多い法廷劇で、これほど見る側にストレートに伝わってくるのも珍しい。台詞に無駄がなく、すべてのシーンが実にシャープで、緊迫感がある。 最初から最後まで会話だけで大きな動きがない。それでいて最後まで目を離すことができなくなる。しかも最後に残る爽快感。最後のシーンは、数ある映画の中で、もっとも好きで印象的なシーンの1つである。 映画脚本の1つの完成形といっても良いだろう。もちろん、演出も俳優も群を抜いていることはいうまでもない。 水曜日 - 10 月 05, 2005裁かるゝジャンヌ ★★☆裁かるゝジャンヌ(1927年・仏)
監督:カール・テオドール・ドライエル 脚本:ジョゼフ・デルテーユ 出演:ルイーズ・ルネ・ファルコネッティ、ウジェーヌ・シルバン、アントナン・アルトー ★★☆ 古典的名画ではあるが、眠くてしようがなかった。(受け身が強要される)映画の進行速度としては厳しいものがある。あまりにまったりしている。
ジャンヌ・ダルクの史劇ということで、民衆を率いるジャンヌが登場する映画を想像していたのだが、まったくもってそういうものではなく、ジャンヌの異端審問の最後の1日を綴ったものであった。したがって戦闘などのスペクタクルはまったくない。ストーリーが冒頭に示されるため、サスペンスなどの要素も一切ない。終始大きな動きがない対話劇で、舞台劇のようでもある。 エイゼンシュタインを彷彿とさせるモンタージュや一風変わった構図など、技法的には面白いが、最後まで惹きつけられるというようなものでもない。ジャンヌ・ダルクをイエス・キリストと対比して描いているようだが、イエスの受難劇にそれほど感心があるわけでもないしね……。 良くも悪くも「古典」である。 水曜日 - 9 月 28, 2005真昼の暗黒 ★★★真昼の暗黒(1956年・現代ぷろだくしょん)
監督:今井正 原作:正木ひろし 脚本:橋本忍 出演:草薙幸二郎、松山照夫、左幸子、内藤武敏、加藤嘉、山茶花究、山村聡 ★★★ 冤罪をモチーフにした法廷ドラマ。当時各賞を総ナメにしたらしい。たしかに意欲的な内容ではあるが、橋本忍の脚本は、どこか『生きる』を思わせるような間延びしたところがあって、途中少し退屈した。今井正の演出も、演出過剰で、今となっては少し気恥ずかしい。法廷劇はハリウッド映画にやはり一日の長があると思った。何せリズム感があって見せ方がうまい(もっとも展開が速すぎてついていけないことも多いが)。
もちろんこの映画の価値を認めるのにはやぶさかでない(社会的にも大きな影響を与えたらしい)。 1956年当時、この映画が非常に注目を集めたにもかかわらず、いまだに冤罪は後を絶たない。嘆かわしい限りだ。 注:この映画は、1951年山口県で実際に起きた八海事件(製作当時、係争中)をモデルにしている。映画制作中、最高裁判所の圧力があるなど物議を醸し、大手映画会社も上映を拒否したらしいが、蓋を開けてみると大ヒットだったということだ。 キネマ旬報ベストテン第1位、日本映画監督賞 毎日映画コンクール日本映画賞、脚本賞、監督賞、音楽賞 ブルーリボン賞ベストテン第1位、作品賞、監督賞、音楽賞、脚本賞 火曜日 - 9 月 27, 2005どん底 ★★★どん底(1936年・仏)
監督:ジャン・ルノワール 原作:マキシム・ゴーリキー 脚本:ジャン・ルノワール、シャルル・スパーク 出演:ジャン・ギャバン、ルイ・ジューヴェ、シュジ・プリム、、ジュニー・アストール ★★★ ゴーリキー原作の戯曲をジャン・ルノワールが映画化したもの。原作を大幅に変えているという(原作読んだことがないからよくわからない)。
ただ全体的に戯曲調(舞台風)であったのは確か。タイトルからネオリアリズム風の暗い映画かとも思ったが、救いのある映画になっていた。ルノワールゆえか。 個人的には、屋外レストランのパーティめいたシーンが、印象派絵画を連想させて良かった。やはりルノワール……。 月曜日 - 9 月 26, 2005ラスト・サムライ ★★★☆ラスト・サムライ(2003年・米)
監督:エドワード・ズウィック 脚本:ジョン・ローガン、エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコヴィッツ 出演:トム・クルーズ、渡辺謙、ティモシー・スポール、真田広之、小雪、原田眞人、中村七之助、福本清三 ★★★☆ 「ダンス・ウィズ・ウルブス」の焼き直し。舞台を明治初期の日本に持ってきた。アメリカ先住民=サムライ=尊いものという図式だ。
話は単純だが、映像が美しく、撮影がなかなか良い。それに何といってもセットに金がかかっている。村を1つ作るとはさすがハリウッド映画! とは言っても500人の兵士が住んでいる村にしてはあまりに小規模であったが。 一番驚いたのが、アメリカ人俳優の日本語に違和感がなかったことだ。『キル・ビル』の奇天烈な日本語と違って、ちゃんと会話として自然だった。米国人役者陣に拍手パチパチ。 ストーリー展開には目新しさはないが、1876年あたりの日本を舞台にしたのはなかなか見事だ(勝元は隆盛に相当するんでしょうか)。時代考証も割合しっかりしていた。 全体的に良くまとまっていて、好感が持てる映画だ。 水曜日 - 9 月 14, 2005日本のいちばん長い日 ★★★☆日本のいちばん長い日(1967年・東宝)
監督:岡本喜八 原作:大宅壮一 脚本:橋本忍 出演:御船俊郎、笠智衆、山村聡、黒沢年男、高橋悦史、小林桂樹、松本幸四郎 ★★★☆ 序盤少し退屈したが(なんせプロローグが20分もあるし)、途中から動きが出てきて俄然面白くなった。さすが、名人橋本忍。
こういう史実があったことも知らなかった。 月曜日 - 9 月 05, 2005幕末太陽傳 ★★★☆幕末太陽傳(1957年・日活)
監督:川島雄三 脚本:田中啓一、川島雄三、今村昇平 出演:フランキー堺、左幸子、南田洋子、石原裕次郎、芦川いづみ、山岡久乃、小沢昭一、二谷英明、小林旭 ★★★☆ 落語の『居残り左平次』の翻案と聞いていたが、『居残り左平次』だけでなく『品川心中』や『三枚起請』などもエピソードとして盛り込まれていた。
また、夏目漱石の『我輩は猫である』に出てくる「かわいそうだた惚れたってことよ」(「Pity is akin to love.」の訳文)という台詞もさりげなく出てきたり、脚本担当者(今村昇平も参加している)の遊び心が随所にちりばめられていて面白かった。何回か見ると、もっと別の発見があるかも知れない。 ストーリーについては、ちょっとどうかなと思う部分もあるが、遊郭の雰囲気が再現されていて味わい深い。それに、今では考えられないほど、セットが豪華! さすが全盛時の日活! だが日活のニューフェース俳優たちの演技は飛び抜けてひどかったぞ。あんまりひどいんで逆の意味でよく目立った。監督も演技面であまりいろいろと要求できなかったに違いない、などといろいろ思いを馳せる映画だった。 金曜日 - 8 月 19, 2005セックスと嘘とビデオテープ ★★★☆アメリカ映画だが、ド派手に人が殺されるでもなく、爆発シーンがあるでもない。アメリカの日常が描かれるきわめてまともな映画。
男女関係や性について淡々と語られるような展開が心地良い。 それぞれの登場人物の反応や台詞も非常にリアルだ。 木曜日 - 8 月 18, 2005アデルの恋の物語 ★★★☆アデルの恋の物語(1975年・仏)
監督:フランソワ・トリュフォー 原作:フランセス・V・ギール 出演:イザベル・アジャーニ、ブルース・ロビンソン、ジョゼフ・ブラッチリー ★★★☆ 美しいイザベル・アジャーニのスチール写真を見てから、いつかは見たいと思っていた。
美女のラブロマンスをぜひ……と思って見始めたが、えらい見当違いだった。激しい激しい映画でした。今風に言えばストーカーですな。実話に基づく映画なんだそうな。 イザベル・アジャーニは、この話の主人公と少しイメージが違うような……でもなかなか好演。可憐な画面映えする女優です。 火曜日 - 5 月 03, 2005シルクウッド ★★★シルクウッド(1983年・米)
監督:マイク・ニコルズ 出演:メリル・ストリープ、シェール、カート・ラッセル、ダイアナ・スカーウィッド ★★★ 10年来見たいと思っていたが、なかなか見る機会がなかった映画。
ついにビデオで見ることができた。BS、CS、地上波を問わず、めったに(というかまったく)放送されない。またレンタルビデオ店にもほとんど置かれていない。 核再処理施設の問題を追求して謎の死を遂げた実在の人物、カレン・シルクウッドを扱った内容だけに、放送上タブーなのかとも思っていたが(原子力関連はデリケートだし、スポンサーもの力も大きいしね)、原子力の問題性を追求するというよりは、むしろ内部告発ものの1つという感じで描かれており、そういう点では少々期待はずれだった。 しかし、ともすれば説明的になる「原子力の恐怖」の扱い方などは実にうまく、あまり説教くさいところもない(『東京原発』は説明的でいただけなかった。あれが悪い例)。ストーリーの語り口は非常に良い。 月曜日 - 2 月 28, 2005土曜日 - 2 月 26, 2005キシュ島の物語 ★★☆キシュ島の物語(1999年・イラン)
監督:ナセール・タグヴァイ、アボルファズル・ジャリリ、モフセン・マフマルバフ 出演:ホセイン・パナヒ、アテフェ・ラザヴィ、ハフェズ・パクデル、モハマド・A・バブハン、ノリェ・マヒギラン ★★☆ 第1話『ギリシャ船』、第2話『指輪』、第3話『ドア』の3話で構成されるオムニバス。
進行がゆっくりなせいか、途中で寝てしまった。映像は良いが、オムニバスだけに内容が乏し目……かな。なにしろ途中で寝たので(起きてから最後まで見ました。最後の話は不条理っぽい……習作としては面白い)。 木曜日 - 2 月 24, 2005東京夜曲 ★★★東京夜曲(1997年・松竹)
監督:市川準 出演:長塚京三、桃井かおり、倍賞美津子、上川隆也、はやし・こば ★★★ 先日、70年代に放送されたテレビドラマ「ありがとう」を見ていて、(下町の)ご近所さんに、今では存在しないような非常に濃厚なつきあいがあるのにビックリしたが、この映画でもご近所の濃厚なつきあいが描かれていた。
さりげない日常をさりげなく描いた映画で、同じ市川準作品の『ざわざわ下北沢』のようなあざとさはない。あまりにもさりげないので、さりげなく見終わってしまう可能性もある。当然、強烈な印象などというものもなく、後味もさりげない(心地よいが)。使われている高田渡の主題歌「さびしいといま」もさりげなかった。 ああ、さりげない、さりげない…… 土曜日 - 2 月 19, 2005キー・ラーゴ ★★★☆キー・ラーゴ(1948年・米)
監督:ジョン・ヒューストン 原作:マックスウェル・アンダーソン 脚本:リチャード・ブルックス 出演:ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、エドワード・G・ロビンソン、クレア・トレバー ★★★☆ ボガートとバコールのお決まりのハリウッド映画だが、霧が晴れていくようなシナリオが絶妙で、スリリングな展開がまったく飽きさせない。
まさに映画的な映画で、存分に楽しめる。ただセットが少しチャチかな…… 金曜日 - 2 月 18, 2005その男ゾルバ ★★★その男ゾルバ(1964年・英米ギリシャ)
監督:マイケル・カコヤニス 原作:ニコス・カザンザキス 出演:アンソニー・クイン、アラン・ベイツ、イレーネ・パパス、リラ・ケドロヴァ ★★★ 男同士の友情物語。クレタ島の楽天性に悲喜劇が織り交ぜられた人間ドラマ。
アンソニー・クインが魅力的な男を演じる。モノクロ映像もなかなか美しい。だが感動を呼び起こすようなタイプの映画ではない。 月曜日 - 2 月 14, 2005東京原発 ★★★東京原発(2002年・バサラ・ピクチャーズ)
監督、脚本:山川元 出演:役所広司、段田安則、平田満、田山涼成、塩見三省、吉田日出子 ★★★ 悪くはないのだが、劇場映画としてはいかがなものか。反原発の集会で行われる寸劇のような印象。
この映画の主張には全面的に賛同するが、どうにもゴージャスさに欠けるというか何というか。テレビ・ドラマとして見ればOKかな。 主演の役所広司は、テレビ東京系の番組『ガイアの夜明け』のようだった…… 火曜日 - 2 月 08, 2005アラバマ物語 ★★★☆冒頭にいきなり「To
Kill」と出てきてぎょっとするが、原題が「To
Kill a
Mockingbird」であった。「モッキンバード(マネシツグミ)を殺すこと」ってな意味。『アラバマ物語』という牧歌的なニュアンスとは異なるが、でもこの邦訳もなかなか良いと見終わった後感じた。
原作はハーパー・リーのピューリッツァー賞受賞小説『アラバマ物語』で、子ども時代を回想した(形式の)話。 子どもの視点から20世紀初頭のアメリカが描かれる。子どもの視点がなかなか心地良い。この映画はストーリーが面白く重大な意味を持っているので、あまりここで多くに触れることはできない(映画評ではストーリーを極力明かさないのがマナー)が、一つだけ。「マネシツグミを殺すこと」というタイトルは「害鳥であれば撃っても良いが、マネシツグミみたいにただ良い声で鳴くだけで人間に害を与えない鳥は撃ってはならない」というフレーズ(映画の序盤に登場人物によって語られる)から来ている。映画を見終わってから「なーるほど」と感じてください。 月曜日 - 2 月 07, 2005ドラッグストア・ガール ★★ドラッグストア・ガール(2003年・「ドラッグストア・ガール」制作委員会)
監督:本木克英 脚本:宮藤官九郎 出演:田中麗奈、柄本明、三宅裕司、伊武雅刀、六平直政、余貴美子 ★★ 現代風の会話がポンポン出てきて面白かったのは最初だけだった。
ちょっとリアリティなさ過ぎじゃねーか、ストーリー展開にもキャラクターにも(<安直)。童話でもSFでもリアリティなきゃ見てらんねーよ。 てゆーか、ありえねー。 (↑こういう会話が出てきます) 火曜日 - 2 月 01, 2005テルミン ★★★テルミン(1993年・米)
監督:スティーブン・M・マーティン ドキュメンタリー (出演:レオン・テルミン、クララ・ロックモア、ロバート・モーグ) ★★★ 電子楽器テルミンと、その発明者であるレオン・テルミン博士を追ったドキュメンタリー。
20世紀初頭、不思議な電子楽器テルミン(演奏者は、楽器のどの部分にも触れずに手を動かすだけで、音程と音量を変化させる)を発明したレオン・テルミン博士は、精力的に活動を続けていたが、1927年、突然失踪し、行方がわからなくなっていた。この映画では、テルミン博士周辺の人々のインタビューと、かつてのテルミン博士の映像を交えながら、その謎にせまる。 覚え書き:個人的には、テルミンは謎に包まれた楽器だと思っていたが、さまざまな映画の(主に恐怖)シーンで使われていた(「失われた週末」、「白い恐怖」、「地球が静止する日」など)。意外にメジャーだったのね。 日曜日 - 1 月 30, 2005逃走迷路 ★★★☆逃走迷路(1942年・米)
監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:ピーター・ヴィアテル 出演:ロバート・カミングス、プリシラ・レーン、ノーマン・ロイド ★★★☆ おきまりの逃亡パターンと言ってしまえばそれまでだが、さすがにヒッチコック、最後まで楽しませてくれる。
これぞ映画職人! 日曜日 - 1 月 30, 2005エルミタージュ幻想 ★★★エルミタージュ幻想(2002年・露独日)
監督:アレクサンドル・ソクーロフ 脚本:アナトーリ・ニキフォーロフ他 出演:セルゲイ・ドレイデン、マリア・クヅネツォワ、ワレリー・ゲルギエフ ★★★ エルミタージュを舞台に繰り広げられる、時空を超えた一大幻想。90分ワンカットで歴史絵巻が展開する。
「エルミタージュ幻想」というタイトルが、まさに90分ワンカットの意味を表している。カメラがエルミタージュの中を動き回り、絢爛豪華な舞台を演出する。ロシア史についてもっと知識があれば、もう少し楽しめたかなとも思う。 金曜日 - 1 月 28, 2005雲 息子への手紙 ★★☆雲 息子への手紙(2001年・ベルギー、独)
監督:マリオン・ヘンセル ナレーション:シャーロット・ランプリング(英語版)、カトリーヌ・ドヌーヴ(仏語版) ★★☆ 世界中の雲(水蒸気や竜巻も含まれる)の映像をこれでもかというくらい見せつけられる。
雲を見るのは好きだが、私としては映画で見るより生で見た方が良い。自然に目が向かない都市生活者向きか。また、母子関係に弱い人は、もしかしたら泣けるかも知れない。 土曜日 - 1 月 22, 2005キル・ビル vol.1 ★★★キル・ビル
vol.1(2003年・米)
監督:クエンティン・タランティーノ 出演:ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、ダリル・ハンナ、千葉真一、風祭ゆき、栗山千明、ジュリー・ドレフュス ★★★ 「深作欣二に捧げる」という字幕が冒頭に出る。なるぼど深作欽二ね。確かにそういう映画です。
30代以上の日本人が見たらいっそう楽しめるかも知れない。かつてのアニメやB級時代劇のパロディというかオマージュというか、とにかくそういうのが満載。音楽や効果音、映像なども凝っていて、いろいろ発見する楽しみがある。 こういう殺伐とした映画は好みがあると思う。はっきり言って私は嫌いだが、それでも随所に楽しめる要素がちりばめられており、思わずニヤッとしてしまう。 端役で出ている風祭ゆきの名前が、冒頭のテロップで主役級の役者と同等に並べられていた。日活ロマンポルノでものすごい演技をしていた女優であるが、タランティーノも日活ロマンポルノを見たのだろうか。何となく、タランティーノが同世代の日本人映画ファンであるかのような錯覚を持ってしまう。 蛇足であるが、主役級のアメリカ人がしゃべる奇怪な日本語はいただけない。あのトツトツとした日本語を聞くと興が冷める。そもそも、こんな(外国人がしゃべるには)無理のある台詞を、日本語がしゃべれない役者にしゃべらす方が問題だ。日本向け上映については、その部分だけ日本人の声優に吹き替えてもらった方が良いんじゃないかと思った。 |