妻たちの思秋期 ★★★☆


妻たちの思秋期 [ルポルタージュ日本の幸福]
斉藤茂男編著
共同通信社
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、読みやすさ:★★★、娯楽性:★★★★、普遍性:★★★☆、訴求力:★★★★

学生時代(1980年代)ある教師が講義で奨めていた本で、20年来気になっていた本。ついに購入した。上のAmazonリンクをたどっていただくとわかるが、ユーズド商品(古本)はなんと「1円」で売られている。手数料などを入れると結果的に341円になるが、それでも安い。よく売れてよく古本屋に流れた本なのだろう。
内容はなかなか重く、当時(そして今でも連綿とこの流れは繋がっていると思うが)の、虐げられる主婦の実像が赤裸々に描かれている。この本は、新聞連載をまとめたものらしいが、登場人物たちに同意する声が非常に多かった(反対する声も非常に多かったらしいが)というのが、なによりも当時の社会を反映しているのではあるまいか。今では(社会潮流の変化などにより)いくぶん変わった部分もあるが、「男社会によって虐げられる女性」という構図は根底に残っているようだ。
企業戦士の夫との生活が破たんし、アルコール依存症になってしまったり離婚を経験したりした数人の女性の物語を軸に話が進んで行くが、観念奔逸のように、次から次と新しい(主役クラスの)女性が出てきて戸惑う箇所も多い。いっそのこと、「○○子の場合」みたいな形で明確に区切った方が分かりやすかったんではないかと思う。
また、やたらと精神科医が登場し、問題夫や主役女性の精神分析をやるのだが、これがかなり独善的で相当違和感を感じる。たとえば「ミニカーの収集癖が親の愛情の欠如のため」らしいのだが、またずいぶん決めつけちゃったもんだねえと思う。
ただそういう部分を別にすると、告発物として、センセーショナルでよくできている。ろくでもない夫ばかり出てくるが、これが現実なんだろうなとも思う。思い当たるフシもなきにしもあらず……だ。ちょっとだけ反省した私でした。

投稿日: 水曜日 - 7 月 05, 2006 05:25 午後          


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