二人の天魔王 ★★★☆


二人の天魔王
明石散人著
講談社文庫
総合:★★★☆
意外性:★★★★、読みやすさ:★★★★、娯楽性:★★★☆、訴求力:★★★

現在の織田信長のイメージは戦後の映画で作られたイメージであって、それ以前は「秀吉の主君」という以上の脈絡で語られることはなかったというのが、本書の趣旨。同時に、織田信長がモデルとしていたのが、室町幕府六代将軍で天魔王と呼ばれていた足利義教だという。足利義教は、今では、どうしようもないマヌケ将軍というイメージが強いが、その生き様や業績は歴史上破格で、さまざまな武将がその方法論を踏襲したという。
実は、この本を読んでもっともビックリしたのは(本書の大部分が割かれている)信長のことではなく、義教のまったく新しいイメージであった。その後、義教関連の本を探したのだが、非常に少ないことがわかった。ましてやこういう(現代人にとって)斬新なイメージで書かれているものは皆無といって良い(小説では一冊あった)。『籤引き将軍足利義教』という本も読んでみたが、こちらは従来の説を踏襲していて面白味に欠ける。
正直、この本に書いていることが本当かどうかはよくわからない。斬新な説であるのは確かだが、以上のような理由で確かめようがない。本書全体にちょっと胡散臭さも漂うのだが、説得力もあるにはある。非常に評価が難しいところである。

投稿日: 土曜日 - 11 月 18, 2006 04:13 午後          


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