なぜ美人ばかりが得をするのか ★★★★


なぜ美人ばかりが得をするのか
ナンシー・エトコフ著、木村博江訳
草思社
総合:★★★★
意外性:★★★★、読みやすさ:★★★、娯楽性:★★★☆、訴求力:★★★★

男は女の何に惹きつけられるのか、女は男の何に惹きつけられるのかといったことを、さまざまな実験データを使って、心理学的、人類学的、生物学的にアプローチするきわめて真摯な本。タイトルと表紙の印象からあまり気が進まずに読み始めたが、非常に多岐に渡る素材がうまくまとめられており、言ってみれば現在の英知が凝縮されたような本である。ちなみに原題は『Survival of the Prettiest -- The Science of Beauty(美しいものは生き残る -- 美の科学)』(こちらの方がしっくり来るような……)。
男が女のどこに美を感じるか(相手の美に反応しやすいのは男の方だという。「男は写真で、女は履歴書で相手を選ぶ」)は、相手の生殖能力がその源になっている。つまり、丈夫な子孫を生むことができる体型、相貌に対して男は美を感じ、それに反応するという。いわゆる「美人」の顔は平均的な顔で、平均的な因子を持つ個体が長生きしやすいという事実から、平均顔である美人が好まれる。また、男がもっとも魅力を感じる(らしい)腰のくびれも、妊娠出産に最適な状態を表しており、女の若さも同様の理由で男が求めることになる。つまり男は、遺伝子を確実に残してくれる(可能性の高い)相手に魅力を感じ、恋をしてセックスに至るということらしい。要するに、人間もただの動物にすぎず、自然の力で動かされているに過ぎないという結論なのだろう。
至極当たり前の結論が導き出されるわけだが、このあたりの論証で非常に多くの実験データが引用されており、なかなか説得力がある(実験データの信憑性についてはいくぶん疑問が残るものもあるが)。
人間の美について幅広く探求しており「美人百科」といった趣もある。何度も読める良書だ。

投稿日: 木曜日 - 12 月 21, 2006 12:07 午後          


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