日曜日 - 12 月 24, 2006
仕立て屋の恋 ★★★★
仕立て屋の恋(1989年・仏)
監督:パトリス・ルコント
原作:ジョルジュ・シムノン
脚本:パトリス・ルコント、パトリック・ドゥヴォルフ
出演:ミシェル・ブラン、サンドリーヌ・ボネール、リュック・テュイリエ、アンドレ・ウィルム
総合:★★★★
意外性:★★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★★、訴求力:★★★☆
異色の恋愛映画。これを恋愛映画と言って良いのかはよくわからないが。だが恋愛の機微などはうまく描かれている。
見た後に虚脱感が残るような映画で、ちょっとロベール・アンリコの『ふくろうの河』を彷彿とさせる。映像は少し薄気味悪いが、同時に美しくもある。
ストーリーの作り手は、おそらく最後の方の例のショッキングなシーンから発想したんじゃないかと思う(私も同様の話は聞いたことがあった)が、これだけの話に仕立てたのはなかなかの技量である。まさにドラマ界の仕立て屋!
最近、ルコントをはじめとするフランス映画をよく見るが、ここ15年くらいのフランス映画は非常に洗練されていて、しかもエレガンスが漂う素敵な作品が多いように思う。恋愛映画は元々あまり好きではないのだが、ここらあたりの恋愛映画は違和感なく見ることができる。そう言えば『ふくろうの河』もフランス映画だ(こちらは恋愛映画ではありません)。
投稿時刻: 10:40 午後
水曜日 - 12 月 20, 2006
下町の太陽 ★★★
下町の太陽(1963年・松竹)
監督:山田洋次
出演:倍賞千恵子、勝呂誉、早川保、葵京子、東野英治郎、石川進
総合:★★★
意外性:★★★、映像:★★★、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★★
青春恋愛ドラマだが、恋愛ものにつきものの臭さやドロドロはなく、至極さわやか。山田洋次の才能の片鱗が窺われる(監督2作目のようだ)。寅さんに通じるような軽みもあり、爽快さを演出している。
東野英治郎が演じた少し異常な人はこの時代の映画に時折出てくるが、この時代はああいう人が普通にいて、周囲の人も普通に接していたのだろうか。考えてみたら良い時代だよなあ。
オバQの歌で有名な石川進がなかなか好演。
投稿時刻: 10:26 午後
水曜日 - 12 月 13, 2006
フェリックスとローラ ★★★☆
フェリックスとローラ(2000年・仏)
監督:パトリス・ルコント
脚本:クロード・クロッツ、パトリス・ルコント
出演:シャルロット・ゲンズブール、フィリップ・トレトン、アラン・バシュング
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
恋愛ドラマだが、さすがはルコント、一筋縄ではいかない。なかなかミステリアスに話が進行していく。精神的に少し緊張感を強いられるが、それでも話は淡々と進む。
シャルロット・ゲンズブールのメークがスゴイ(サイレント映画の登場人物のようにシルエットを強調したかったらしい)が、時折見せる笑顔がなかなか魅力的。劇中でも「笑顔が良い」と周りに言われているが……。
恋愛ドラマを見たくてこの映画を見たのだが、期待していた方向性とは少し違っていた。それでも十分見応えがある佳作であった。
投稿時刻: 05:25 午後
火曜日 - 12 月 12, 2006
敬愛なるベートーヴェン ★★★
敬愛なるベートーヴェン(2006年・英・ハンガリー)
監督:アニエスカ・ホランド
出演:エド・ハリス、ダイアン・クルーガー、マシュー・グード
総合:★★★
意外性:★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
そこそこ良くできた芸術映画という印象。第九作曲前後のベートーヴェンの生き様を女性写譜師の目で投影する。
ストーリーは、芸術映画でよく使われるパターンを踏襲しており、意外性もあまりなかった。ベートーヴェンの人物像についてのイメージがない人が見ると驚くかも知れないが、私の持っているベートーヴェンのイメージは、この映画以上に粗野かつ粗暴なものである。そういう点も少し物足りなさが残った原因だと思う。
だが、ベートーヴェンの音楽が、良い音響でふんだんに聴けるので、音楽映画としては楽しむことができた。第九の演奏も非常に良かった。第九だけで感動できる。
それから『敬愛なるベートーヴェン』というタイトルだが、ちょっとひどすぎるんじゃないか。もう少し工夫がほしい。なお原タイトルは『Copying
Beethoven』で、直訳すれば『ベートーヴェンを写す』ということになる(この方がまだましなような)。
投稿時刻: 11:04 午前
金曜日 - 12 月 08, 2006
トニー滝谷 ★★★☆
トニー滝谷(2005年・東京テアトル)
監督:市川準
原作:村上春樹
脚本:市川準
出演:イッセー尾形、宮沢りえ、篠原孝文、木野花
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、映像:★★★★、娯楽性:★★★、完成度:★★★★、訴求力:★★★☆
架空(?)の登場人物、トニー滝谷の半生。
市川準らしい、淡々としたドキュメンタリー風のタッチが心地良い。映像も美しく、左から右に流れていくカットはさながら絵巻物のようである(絵巻物は右から左だが)。
イッセー尾形も宮沢りえも二役をこなし、それぞれ名人芸を発揮している。こんな役、イッセー尾形じゃないとできないだろうというような、すばらしいキャスティングである。
投稿時刻: 04:29 午後
木曜日 - 12 月 07, 2006
郵便配達は二度ベルを鳴らす ★★★☆
郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942年・伊)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
原作:ジェームズ・M・ケイン
出演:マッシモ・ジロッティ、クララ・カラマーイ、フアン・デ・ランダ、エリオ・マルクッツォ
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★★、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
見るのは二度目だが、内容をほとんど憶えていなかった。なにせ前回はヴィスコンティ3本立ての最後の1本だったので、見る前からすでに疲れ果てているという有様だった。
前回は、遅い展開にいらついたという印象があるのだが、今回はそういうことはあまり感じなかった。前回よりも濃密な印象を受けたためか。以降のヴィスコンティ映画とは少し様相が異なり、どちらかというとネオリアリズモ風である。こういった男女の愛憎劇もなかなか面白い。
主役の男はなかなかいい男だった。さすがはヴィスコンティ。
投稿時刻: 04:30 午後
木曜日 - 12 月 07, 2006
スウィングガールズ ★★★
スウィングガールズ(2004年・東宝)
監督:矢口史靖
脚本:矢口史靖
出演:上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、竹中直人、白石美帆
総合:★★★
意外性:★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★☆
よく作り込まれていておもしろいことにはおもしろいのだが、ストーリーが安直だ。マンガのストーリーによく見られるような安直さである。マンガが原作かと思ったくらいだ(どうやらオリジナル作品らしい)。「そんなにうまぐいがねって」と突っ込みを入れたくなる。
登場人物がみな東北弁(米沢弁ですか?)を話すのは「なぜ?」と思った(関係者が米沢出身なのか?)が、それはそれで非常に味があって良かった。出演の竹中直人は、『シコふんじゃった』で見せたような絶妙なポジションで存在感を見せるが、ストーリーの安直さという点でも『シコふんじゃった』と共通していた。
投稿時刻: 04:14 午後
金曜日 - 11 月 03, 2006
失楽園 ★★☆
失楽園(1997年・東映)
監督:森田芳光
原作:渡辺淳一
出演:役所広司、黒木瞳、星野知子、柴俊夫、寺尾聰、木村佳乃
総合:★★☆
意外性:★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
<ネタバレ注意>
このストーリー自体についていけない。
寺尾聰扮する中年男が「恋をしたいなあ」と言うシーンなんか気色悪かった。ほんで挿入したまま心中するという発想も拒否感を抱く。言っとくが、何も不倫がイヤとか、中高年の恋愛がイヤとかそういう意識は私にはまったくない。ただこういうゲスな表現の仕方が嫌なだけである。たぶんこの原作者の著書は読むことができないだろうと思う。
だが黒木瞳のベッドシーンはなかなかだった。フェ○○○シーンなんて感涙ものだ……。ポルノ映画として見ればそこそこ楽しめる。
柴俊夫が好演というか怪演している。
投稿時刻: 04:10 午後
月曜日 - 10 月 02, 2006
スターウォーズ
エピソード3 シスの逆襲 ★★☆
スターウォーズ
エピソード3 シスの逆襲(2005年・米)
監督:ジョージ・ルーカス
出演:ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン
総合:★★☆
意外性:★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★★、完成度:★★☆、訴求力:★★☆
アナキン・スカイウォーカーがいかにしてダース・ベイダーになるかというのがポイントだと思うが、そこらへんが非常に甘いというかリアルさがない。少し無理がある。それに背景も非常に薄っぺらで、大きな素材を扱った割には小さな世界しか描けていないと思った。悪くいえば中学生程度の想像力という感じ。こんなのがおもしろいですかと問いかけたくなる1本。
スターウォーズは最初のシリーズだけで良かったなと思わせてくれた。
投稿時刻: 04:06 午後
土曜日 - 9 月 23, 2006
再会 ★★☆
再会(1975年・松竹)
監督:斉藤耕一
出演:野口五郎、江波杏子、池辺良、角ゆり子、佐藤英夫
総合:★★☆
意外性:★★☆、映像:★★☆、娯楽性:★★☆、完成度:★★☆、訴求力:★★☆
若き日の野口五郎が主演で、アイドル映画かと思いきや、斉藤耕一流の、見てて重くなるような映画だった。そんなわけで、この頃の斉藤耕一の映画、『旅の重さ』、『約束』、『津軽じょんがら節』などと雰囲気や影像が非常によく似ていた。野口五郎は『津軽じょんがら節』の織田あきらみたいな存在感を見せており、ベテラン俳優と丁々発止と渡り合っていた。
ただ、ストーリー的に少し無理があるような気もする。(少し前の)シナリオの新人賞の受賞作みたいなストーリーであった。ともかく重かった。
投稿時刻: 04:04 午後
月曜日 - 9 月 11, 2006
生きているうちが花なのよ
死んだらそれまでよ党宣言 ★★★
生きているうちが花なのよ
死んだらそれまでよ党宣言(1985年・ATG)
監督:森崎東
脚本:近藤昭二、森崎東
出演:倍賞美津子、原田芳雄、平田満、片石隆弘、泉谷しげる
総合:★★★
意外性:★★★★、映像:★★、娯楽性:★★、完成度:★★★、訴求力:★★★☆
原発ジプシーを題材にした映画であるためか、めったに上映、放送されることがない異色映画。85年頃に公開されたことは知っていたが、まったく見る機会がなかった。しかしこのたびついにCSで放送されたので、やっと見ることができた。ちなみにビデオもDVDも出ていない。
映画作品としては、森崎東風というか、ストーリーも映像もごちゃごちゃしていて窮屈なのだが、なにしろ原発ジプシーを素材にするという、それだけで十分評価に値する。しかも原子力問題(ひいては原発の存在)について正面から問いかける内容になっている。
こういう映画が普通に上映される状況になってほしいものである。また、映画の内容自体を批評できる時代になってほしいものだ。
投稿時刻: 04:01 午後
木曜日 - 9 月 07, 2006
パッチギ ★★★
パッチギ(2004年・シネカノン)
監督:井筒和幸
原案:松山猛
出演:塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子
総合:★★★☆
意外性:★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
往年のフォークソング「イムジン河」をモチーフにした、60年代京都の青春映画。
暴力シーンは井筒和幸らしく相変わらず激しくて、私などは見ていて引いてしまう。だがストーリーは予定調和な感があり、少しもの足りなくもある(できすぎの感じがするんだな)。
元フォーククルセダーズの松山猛が実際に経験したエピソードが(形を変えてだが)あちこちで使われている(後日松山氏のエッセイで知った)。
投稿時刻: 03:59 午後
月曜日 - 9 月 04, 2006
不確かなメロディー ★★★
不確かなメロディー(2001年・アースライズ)
監督:杉山太郎
ナレーション:三浦友和
出演:忌野清志郎、藤井裕、武田真治、上原裕、ジョニー・フィンガーズ
総合:★★★
意外性:★★☆、映像:★★☆、娯楽性:★★☆、完成度:★★★、訴求力:★★★
忌野清志郎率いるラフィータフィーのツアーを追ったドキュメント。
清志郎やロックのツアーに関心のある人向き。
投稿時刻: 03:58 午後
土曜日 - 8 月 19, 2006
冬の華 ★★★☆
冬の華(1978年・東映)
監督:降旗康男
脚本:倉本聰
音楽:クロード・チアリ
出演:高倉健、池上季実子、田中邦衛、藤田進、三浦洋一、北大路欣也、倍賞美津子、池辺良、小林亜星、小沢昭一、大滝秀治
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★★★、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
東映のヤクザ映画なんだが、殺伐とした部分だけでなく、心温まる要素や生活感なんかも盛り込まれていて、非常に良くできたシナリオに感心する。70年代から80年代前半といったら、倉本聰の絶頂期である。
メインとなるストーリーは、悪に挑むヒーローといった感じで、60年〜70年代の東映ヤクザ映画(特に『昭和残侠伝』!)のオマージュみたいなものである。だが、池辺良が高倉健に早々に刺されるなんざ、ちょっとしたパロディみたいにも感じられる。
基本的に高倉健をいかに活かすかというコンセプトなんだろうが(この後の『駅
STATION』でも同様)、十二分に活かしきっているのがさすがである。意図的だかどうだか知らないが『幸福の黄色いハンカチ』(こちらも高倉健の魅力の映画)を彷彿とさせるようなシーンもあった。
登場人物もそれぞれに魅力的である。キャスティングも豪華で、それこそ「華」がある。
クロード・チアリの音楽が、また良い雰囲気を出しているんだな、これが。
投稿時刻: 10:21 午後
火曜日 - 8 月 15, 2006
それから ★★★☆
それから(1985年・東映)
監督:森田芳光
脚本:筒井ともみ
出演:松田優作、藤谷美和子、小林薫、中村嘉津雄、草笛光子、風間杜夫、イッセー尾形、森尾由美、羽賀研二、笠智衆
総合:★★★☆
意外性:★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
夏目漱石の『それから』は読んでいないので、どの程度翻案できているかなどはわからないが、ややもするとドロドロするようなストーリーにもかかわらず、上品な雰囲気が漂う素敵な映画に仕上がっていた。森田監督特有の遊びカットもあり、イメージ・ショットもなかなか効果的で、自然な流れが心地良い。
全体的に時間がまったり流れるので、ややもすると退屈になりがちだが、ぎりぎりで上品さの方に傾いている(見る側のコンディションによっては退屈かも)。
また、美術がなかなかすばらしく、調度などにも感心した。脚本については、やや文語調過ぎないかとも思うが、漱石の著作のイメージをそのまま持ち込むためには仕方ないのかなとも思う。このあたりは難しいところだ。
投稿時刻: 07:02 午後
土曜日 - 8 月 12, 2006
珈琲時光 ★★☆
珈琲時光(2003年・松竹)
監督:ホウ・シャオシェン
脚本:チュー・ティエンウェン、ホウ・シャオシェン
出演:一青窈、浅野忠信、萩原聖人、余貴美子、小林稔侍
総合:★★☆
意外性:★★、映像:★★★、娯楽性:★★、完成度:★★☆、訴求力:★★
途中でいったん見るのをやめて、2カ月後に続きを見た。こういう見方をしたのは『鉄の男』以来だ。
小津安二郎生誕100年記念映画ということで、ホウ・シャオシェンが、小津を意識して作った映画である。ホウ・シャオシェンも小津安二郎も好きな監督(確かに共通点あるよな)なので、かなり期待して見たのだった。
内容としては、大きな事件は特に起こらず(この辺、小津風)、東京に住むあるフリーライター女性の日常が淡々と描かれる。
全編、ドキュメンタリー・タッチでとってもさりげない。さまざまなアイテムも次々と繰り出されるが、掘り下げられることもなく、表面をスーッと通り過ぎていく。あまり意味がない(と想われる)カットが延々と垂れ流される……こうして、まさに日常が描かれるのだが、映画として見るにはちときついのではないか。環境映像として垂れ流しにしておく……そんなイメージである。
演技も非常にさりげなく、若者の日常会話はこんな感じかと想わせるものがある。でも、それが少し不愉快だったりする(私にとって)。映像は、綺麗な箇所もあるが、全体に長回しが多くて少しきつい。
さりげない映画は大歓迎なのだが、この映画については、どちらかといえば「無内容」と表現した方が良いのではないかと思う。がっかりなホウ・シャオシェン作品であった。
投稿時刻: 11:35 午後
木曜日 - 6 月 22, 2006
昼顔 ★★★☆
昼顔(1967年・仏)
監督:ルイス・ブニュエル
原作:ジョセフ・ケッセル
脚本:ジャン=クロード・カリエール、ルイス・ブニュエル
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・ソレル、ジュヌヴィエーヴ・パージュ、ミシェル・ピッコリ
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、映像:★★★☆、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
若妻が娼婦になるという刺激的な話だが、プロットがなかなか凝っていて、見終わってからうなってしまった。
カトリーヌ・ドヌーヴを娼婦にするブニュエルもすごい。
投稿時刻: 04:28 午後
木曜日 - 5 月 04, 2006
我が道を往く ★★★☆
我が道を往く(1944年・米)
監督:レオ・マッケリー
原作:レオ・マッケリー
脚本:フランク・バトラー、フランク・キャベット
出演:ビング・クロスビー、バリー・フィッツジェラルド、リーゼ・スティーブンス、ジーン・ロックハート、フランク・マクヒュー
総合:★★★☆
意外性:★★★、映像:★★★、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
ビング・クロスビー主演のミュージカル風コメディ。
よくできた、心温まる映画だが、でき過ぎの感もあり。アメリカのミュージカルにありがちではあるが、予定調和な感じが非情に強く、見ながら少しあきれていた。
ビング・クロスビーの「我が道を往く」の歌も、ちょっとしつこく、「どうかな」と思った。
確かによくできた良い話ではあるんだが。
1944年度アカデミー賞、作品賞・主演男優賞・助演男優賞・監督賞・脚色賞・原案賞・歌曲賞
投稿時刻: 10:57 午後
火曜日 - 5 月 02, 2006
ジャンヌ・ダルク ★★★☆
ジャンヌ・ダルク(1999年・仏米)
監督:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン、アンドリュー・バーキン
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、ジョン・マルコヴィッチ、フェイ・ダナウェイ、ダスティン・ホフマン、ヴァンサン・カッセル
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、映像:★★★☆、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
ジャンヌ・ダルクの新解釈による伝記映画。
映像は非常に美しく、時代考証や衣装も楽しめる。それにキャストが豪華! ミラ・ジョヴォヴィッチも端正で、なかなか良いジャンヌを演じている。
エンタテインメントの要素だけでなく、哲学的な含みもあり、なかなか濃厚な2時間半であった。いまだに謎に包まれているジャンヌ・ダルクの生涯を、現実的かつ整合性のある解釈で解明しており、なかなか興味深い。ただ、前半の戦闘シーンの連続とうって変わって、後半は一挙に『裁かるゝジャンヌ』と化し、見ていて疲れる展開になる。もちろんこの辺がストーリーとしてよくできた部分なのではあるが……。難しいところではある。
投稿時刻: 06:58 午後
金曜日 - 4 月 28, 2006
グレート・ワルツ ★★★
グレート・ワルツ(1938年・米)
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
原作:ゴットフリード・ラインハルト
音楽:ヨハン・シュトラウス、ディミトリ・ティオムキン
出演:フェルナン・グラヴェ、ルイーゼ・ライナー、ミリザ・コルジャス、ヒュー・ハーバート
総合:★★★
意外性:★★、映像:★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★☆、訴求力:★★☆
ヨハン・シュトラウスの生涯を題材にした伝記映画。『ベニイ・グッドマン物語』(ベニー・グッドマン)とか『愛情物語』(エディ・デューチン)とか『アメリカ交響楽』(ジョージ・ガーシュイン)とか、そういった映画と、構成も展開も音楽の扱い方もよく似ている。いかにもハリウッド映画! しかもミュージカル仕立てになっているし。これがデュヴィヴィエか、という驚きもある。デュヴィヴィエでもハリウッドに行けばこういう映画になってしまうということか……。
補足:このDVD(「世界名作映画全集」の1本)だが、字幕の誤植が非常に多い。冒頭、画面に表示される英文(J.
シュトラウス以前はウィーンの人々が人前で踊ることはなかったとか、そういった導入文)も訳されてなかったし、やっつけ仕事の感をぬぐえない。
投稿時刻: 09:04 午前
水曜日 - 4 月 26, 2006
パス停留所 ★★★
パス停留所(1956年・米)
監督:ジョシュア・ローガン
原作:ウィリアム・インジ
脚本:ジョージ・アクセルロッド
出演:マリリン・モンロー、ドン・マレー、アーサー・オコンネル、ベティ・フィールド
総合:★★★
意外性:★★★、映像:★★☆、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★、訴求力:★★★
別稿参照。
投稿時刻: 10:19 午後
火曜日 - 4 月 11, 2006
上海から来た女 ★★★
上海から来た女(1947年・米)
監督:オーソン・ウェルズ
原作:シャーウッド・キング
脚本:オーソン・ウェルズ
出演:オーソン・ウェルズ、リタ・ヘイワース、エヴェレット・スローン、テッド・デ・コルシア
総合:★★★
意外性:★★☆、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★、訴求力:★★☆
このテの映画では毎度のことだが、速い展開についていけない。もう一度見たらたぶんよくわかるのだろうが、もう一回見たいとも思わない……。タルコフスキーの映画にも当てはまるが、どうもリズム感が私と合わないのだな。
映画の展開の速さは、同じくオーソン・ウェルズの『市民ケーン』などと似ているような気もする。『市民ケーン』は今となっては好きな映画だが、最初見たときは、ストーリーを追っていくのがやっとという有様で、しかも、見た後何か抜け落ちているような印象が残った。これはこの映画でも同様だ。
オーソン・ウェルズが面白い映像を駆使しているが、なんとなく「実験的な映像」というレベルを抜け出ていないような気がする。
投稿時刻: 05:38 午後
月曜日 - 4 月 10, 2006
僕の村は戦場だった ★★★
僕の村は戦場だった(1962年・ソ)
監督:アンドレイ・タルコフスキー
原作:ウラジミール・ボゴモーロフ、ミハイル・パパワ
脚本:ウラジミール・ボゴモーロフ、ミハイル・パパワ
出演:コーリャ・ブルリャーエフ、ワレンティン・ズブコフ、ニコライ・ブルリャーエフ
総合:★★★
意外性:★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★☆、完成度:★★★、訴求力:★★★
映像詩人、タルコフスキーの長編処女作。
タルコフスキーが好きな人には面白いかも知れない。私はやはり、他のタルコフスキー作品同様、途中眠くて仕方なかった。わりと緊張感のある内容だったにもかかわらず……。映像は美しいがね。
やはり水がドバドバッと出てきた……。
投稿時刻: 05:24 午後
日曜日 - 4 月 02, 2006
三つ数えろ ★★☆
三つ数えろ(1946年・米)
監督:ハワード・ホークス
原作:レイモンド・チャンドラー
脚本:ウィリアム・フォークナー、リー・ブラケット
出演:ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、ジョン・リッジリー、マーサ・ヴィッカーズ、レジス・トゥーミー
総合:★★☆
意外性:★★☆、映像:★★☆、娯楽性:★★☆、完成度:★★、訴求力:★★
話に全然付いていけなかった。すべてを台詞で説明するため、字幕を一生懸命追いかけ、なおかつ登場人物の顔とその台詞に出てくる名前を一致させるので精一杯で、サスペンスの面白さもなければ、謎解きの面白さもない。確かにボガートのフィリップ・マーロウはなかなか良いが、原作を読んでいない日本人(私のこと)が見る分には正直少しきつい。もう一度見れば、内容が大分整理されて楽しめるかも知れないが、もう見る気はしない。途中睡魔との戦いになった。この映画を見る人は原作を読んでからの方が良いと思う、絶対。
余談だがこのDVD、「両面1層」という変わった形式になっていて、45年版と46年版がそれぞれの面に収録されている。大サービス版ではあるが、自分が見たのがどっちだったのかもよくわからないのであった(レーベルが付いてないからね)。
投稿時刻: 09:57 午後
月曜日 - 3 月 27, 2006
真珠の耳飾りの少女 ★★★★
真珠の耳飾りの少女(2003年・英ルクセンブルグ)
監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ
撮影:エドゥアルド・セラ
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ、エシー・デイヴィス
総合:★★★★
意外性:★★★☆、映像:★★★★☆、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★★、訴求力:★★★☆
オランダの画家、ヤン・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」を題材にしたトレイシー・シュヴァリエの原作の映画化。
だが、原作ものを映像化したというレベルではなく、フェルメールの絵画に直に接近しているのがよくわかる。
この映画の一番の魅力はやはり映像である。フェルメールの世界を映像でことごとく再現しており、フェルメール好きの人ならばあちこちでニンマリしてしまうだろう。構図やインテリアだけでなく(これだけでもなかなかなんだが)、光の具合も再現されている。特に驚くのは、フェルメールの絵のタッチ(マチエールというのかな)まで似ているということ。どうやって再現しているのかわからないが、輪郭を少しぼかして若干ハレーションを起こさせるような撮り方をしているが、これがフェルメールのタッチによく似ている。全編でこういう効果を出しているわけではなく、フェルメールの絵に似た構図の箇所でのみやっているので意図的なものだと思うが、正直これはすごい! 掃除のシーンでさえも、フェルメール絵画の再現になっている。
バルビゾン派のフェルメール風とか、横長の印象派(浮世絵)構図のフェルメール風というようなものも出てきて、なかなか面白い。
もちろん映像だけでなく、ドラマとしても人間の機微が描かれていて、スリリングな展開もあり、まったく最後まで飽きることがない。でもやっぱり、西洋美術好きにはたまらん映画だろうなと思う。
余談だが、この映画に登場するフェルメールの奥方が、同じオランダのヤン・ファン・エイクの絵(「アルノルフィニ夫妻の肖像」)に出てくる人物によく似ており、こういうのも意図的だったんだろうかと気になった。
投稿時刻: 09:37 午前
日曜日 - 3 月 26, 2006
恋人よ帰れ!
わが胸に ★★★
恋人よ帰れ!
わが胸に(1966年・米)
監督:ビリー・ワイルダー
脚本:ビリー・ワイルダー、I.A.L.
ダイヤモンド
音楽:アンドレ・プレヴィン
出演:ジャック・レモン、ウォルター・マッソー、ロン・リッチ、ジュディ・ウェスト、クリフ・オズモンド
総合:★★★
意外性:★★★、映像:★★★、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★、訴求力:★★★
お馴染みのジャック・レモン、ウォルター・マッソーが登場するビリー・ワイルダーの喜劇だが、テンポがもう一つで、途中何度か見るのをやめようかと思った。くすぐりも効いていて(映画ネタのくすぐりが笑わせる)、面白いことは面白いんだが。
ラスト・シーンはなかなか印象的だが、「あれ、ここで終わり?」という感は否めない。面白いことは面白いんだがねえ。
投稿時刻: 09:42 午前
土曜日 - 3 月 25, 2006
戦争と平和
第4部 ★★★☆
戦争と平和
第4部:ピエール・ベズーホフ(1965〜67年・ソ)
監督:セルゲイ・ボンダルチュク
原作:L.
N.
トルストイ
音楽:ヴァチェスラフ・オフチンニコフ
出演:セルゲイ・ボンダルチュク、リュドミラ・サベリーエワ、ヴァチェスラフ・チーホノフ、イリーナ・スコブツェワ、アナスタシャ・ヴェルティンスカヤ
総合:★★★☆
意外性:★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★、訴求力:★★★☆
壮大なスケールで描かれる『戦争と平和』。ソビエト時代に、巨費を投じて作ったという。長い長〜い大河映画もこれで完結。
第4部は、ボロディノの戦いからモスクワ入城、ナポレオン軍の暴虐、ナポレオン軍の撤退と歴史が動き、登場人物たちの人生もそれに合わせて揺れ動く。第4部は、まったく眠くなることもなく、相当な緊迫感がある。なるほど、第1部から第3部はすべてこのための導入部だったのだと納得させられる出来映えである。演出はやや粗く、拙いオーバーラップなどの効果もあるが、それでも、戦争や暴虐が身近にひたひたと迫る様子の表現は秀逸である。
ナポレオン戦争といえば、歴史の一出来事というマクロ的な感覚しかないが、こういう形で戦争の悲惨さを突きつけられると、歴史上の事件であるナポレオン戦争に対する認識も変わるというものだ。ゴヤがナポレオン戦争を告発するために描いた『1808年5月3日』が、非常に身近な感覚で思い出された(同じようなシーンがあったし、犠牲者がイエスのように描かれるシーンもあった)。
戦闘シーンは第1部から第4部まで力が入っており、ロマン派の絵画のような豪華さ(?)である。ものすごく金がかかっているのがよくわかる。「ソ連の威信をかけた」映画だったんだなとあらためて納得する。
全体的に、登場人物たちにあまり入れ込まない演出で、人間の営みを俯瞰するような映像、ナレーションであり、戦争(人間)の愚かさを訴えるメッセージは十分に伝わってきた。無骨ではあるが、贅沢で高級な良い映画である。
投稿時刻: 05:46 午後
金曜日 - 3 月 24, 2006
戦争と平和
第3部 ★★★
戦争と平和
第3部:1812年(1965〜67年・ソ)
監督:セルゲイ・ボンダルチュク
原作:L.
N.
トルストイ
音楽:ヴァチェスラフ・オフチンニコフ
出演:セルゲイ・ボンダルチュク、リュドミラ・サベリーエワ、ヴァチェスラフ・チーホノフ、イリーナ・スコブツェワ、アナスタシャ・ヴェルティンスカヤ
総合:★★★
意外性:★★☆、映像:★★★☆、娯楽性:★★☆、完成度:★★☆、訴求力:★★★
壮大なスケールで描かれる『戦争と平和』。ソビエト時代に、巨費を投じて作ったという。
いよいよナポレオン戦争も佳境に入ってきた。フランス軍がモスクワ近郊まで迫ってボロディノの戦いが始まる。登場人物たちも否応なしに戦争に巻き込まれていく。
豪華絢爛で贅沢な映画なんだが、眠いったらありゃしない。2回見ようとして、2回とも途中で眠りそうになった。3回目にしてやっと最後までたどり着いたという有様(劇場で見たらまた違うんだろうが)。
途中からボロディノの戦闘が始まると眠くなることはないんだが、それまでの話にあまり緊張感がないんで退屈する。実際戦争が始まるときというのはそういうものなのかも知れないが。
投稿時刻: 05:24 午後
木曜日 - 3 月 23, 2006
お茶漬の味 ★★★
お茶漬の味(1952年・松竹)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
出演:佐分利信、木暮実千代、津島恵子、鶴田浩二、淡島千景、笠智衆
総合:★★★
意外性:★★☆、映像:★★☆、娯楽性:★★☆、完成度:★★★、訴求力:★★★
夫婦の危機を描いた小津作品。小津作品特有のくすぐりがきわめて少ないため、最後まで見るのに骨が折れる。佐分利信と鶴田浩二が好演。鶴田浩二は、『秋刀魚の味』の吉田輝雄のようなひょうひょうとした男を演じていて、(他の映画での)渋い二枚目の印象とはずいぶんかけ離れている。
悪妻の木暮実千代が豹変してからが一番の見せ場なのであろうが、ちょっとあざとく、しらけてしまった。
投稿時刻: 04:44 午後
金曜日 - 3 月 17, 2006
日本万国博 ★★★☆
公式長編記録映画
日本万国博(1971年・
松竹)
監督:谷口千吉
撮影:上松永吉
音楽:間宮芳生
ナレーション:石坂浩二、竹下典子
総合:★★★☆
意外性:★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★、訴求力:★★★☆
1970年の大阪万博の記録映画。
大阪万博と言えば、当時子供だった我々世代にはあこがれ以外の何者でもない。それがDVDという形ではあれ、疑似体験できるのは感無量である。
各パビリオンが紹介されるが、各館の外国人コンパニオンと客との間にコミュニケーションがあって、和気あいあいとしたのどかな雰囲気が伝わってくる。当時の日本はこういう感じだったのかと感心した(なんとなく外国人が描いた江戸時代の民衆の描写に似ている)。万国博覧会というのはかくありたいものだ。
もっとも映画の後半になって、1日に83万人もの観客が来場した日が紹介されていたが、それはもう今の日本の状況とも非常に似ていて、人々には余裕がまったくなく、我先にと目的地に殺到していた。見るだけで気分が悪くなるような光景である。だが、それもこれも大阪万博……。
投稿時刻: 10:04 午後
火曜日 - 1 月 31, 2006
カンダハール ★★★☆
カンダハール(2001年・イラン)
監督:モフセン・アフマルバフ
脚本:モフセン・アフマルバフ
出演:エルファー・バズィラ、ハッサン・タンタイ、サドュー・ティモリー、ハヤトラ・ハキミ
総合:★★★☆
意外性:★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
タリバン政権下のアフガニスタンを扱った映画で、9・11以前に作られたそうな。タリバン政権下でしいたげられる人々(特に女性)の状況を強烈に訴えている。
一種のロード・ムービーだが、飽きることなく最後まで見ることができた。タリバン政権の圧政をこの映画からもかいま見ることができる。女性にとっては想像以上に不自由だ。
シナリオ展開がちょっと独特で、新しい登場人物がいきなり関係ない場面で現れ、やがて主役と合流していくという方法が採られている。はじめのうち話が変わったのかと思っているとやがて本流に収束されていく。ちょっと目新しいのでなかなか慣れないが、しかしそれはそれで面白い方法で、効果も上がっている。
映像もきれいでよく練られたストーリー展開だが、動きが全体にゆっくりしているせいか、インパクトは小さ目だった。
投稿時刻: 11:03 午後
月曜日 - 1 月 23, 2006
マルタの鷹 ★★★
マルタの鷹(1941年・米)
監督:ジョン・ヒューストン
原作:ダシール・ハメット
脚本:ジョン・ヒューストン
出演:ハンフリー・ボガート、メアリー・アスター、ピーター・ローレ、シドニー・グリーンストリート、ウォード・ボンド
総合:★★★
意外性:★★★、映像:★★☆、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★、訴求力:★★★
名画の誉れ高い作品ではあるが、どうもカラクリの説明で終始したような感がある。ハンフリー・ボガートのハード・ボイルド第1作という映画史的な意味は重々承知しているが、作品自体については、展開に意外性がなく魅力的な人物が登場するわけでもない。今となっては、見所の少ない平凡な映画になってしまっている(公開当時はどうだったかわからないが)。
投稿時刻: 02:59 午後
水曜日 - 1 月 18, 2006
心の旅路 ★★★☆
心の旅路(1942年・米)
監督:マーヴィン・ルロイ
原作:ジェームズ・ヒルトン
脚本:クローディン・ウェスト、ジョージ・フローシェル、アーサー・ウィンペリス
出演:ロナルド・コールマン、グリア・ガーソン、フィリップ・ドーン、スーザーン・ピータース
総合:★★★☆
意外性:★★★、映像:★★☆、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
記憶喪失をモチーフにしたメロドラマ。今でこそ、記憶喪失のメロドラマはありきたりだが、この映画が元祖的な存在かもしれない。ハーレクイン・ロマンスみたいな要素がなきにしもあらずだが、話がよくできていて、スリリングな展開もある。公開時のアメリカの映画評にヒッチコックの『レベッカ』にたとえるものがあったが、(話は似てはいないが)なるほどとうなずかせるものがある。心洗われる作品でした。
グリア・ガーソンの貞女(?)ぶりがとても良い。また、『心の旅路』という邦題も実に良い。
投稿時刻: 05:56 午後
日曜日 - 1 月 15, 2006
誓いの休暇 ★★★☆
誓いの休暇(1959年・ソ)
監督:グリゴーリ・チュフライ
脚本:ワレンチン・エジョフ、グリゴーリ・チュフライ
出演:ウラジミール・イワショフ、ジャンナ・プロホレンコ、アントニーナ・マクシーモア
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★★☆、完成度:★★☆、訴求力:★★★☆
ソビエト製の戦争映画だが、平和を訴える反戦ものである。
エピソードとしてラブロマンスみたいな要素もあってなかなか楽しめるが、演出が無骨で、いかにもソビエト製という感じである。
休暇をもらって帰郷する1兵士の話で、それ以上書くと内容をばらしてしまうことになるので書かないが、一種のロード・ムービーとも言える。展開がなかなか予測できない面白さもある。それにすごく唐突な感じで終わる。いかにも無骨である。インパクトの強い良い映画であるが、無骨さが強い印象として残った。
なお、監督のチュフライは、この映画が原因となって、ソビエト映画界から干される形になったらしい。
投稿時刻: 05:46 午後
水曜日 - 1 月 11, 2006
ジャマイカ
楽園の真実 ★★★☆
ジャマイカ
楽園の真実(2001年・米)
監督:ステファニー・ブラック
原作:ジャメイカ・キンケイド
脚本:ジャメイカ・キンケイド
ナレーション:ジャメイカ・キンケイド、ベリンダ・ベッカー
総合:★★★☆
意外性:★★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★☆、完成度:★★★☆、訴求力:★★★☆
今のジャマイカの姿をありのままに示すドキュメンタリー映画。
楽園のイメージで観光に供されているジャマイカ。だがその背後には、グローバリゼーションで攪乱された市民の生活があった。
IMFによって押しつけられたグローバリゼーションによって産業が破壊され、治安は悪化し、市民は奴隷労働に押し込められる。これが現代の植民地政策だ。現代版植民地政策を押しつけられる側の目から、その現実やからくりを明かす意欲作だ。大国の利己主義で振り回される途上国の姿がじっくりと描かれている。
グローバリゼーションが何をもたらすか、市民生活のレベルでわかる。グローバリゼーションについてはいろいろなところで語られている(その良い面を強調する論理が多い)が、目の前の現実を見れば、まやかしの理論に惑わされることもないというものだ。
投稿時刻: 10:01 午前
月曜日 - 1 月 02, 2006
ベルリン・フィルと子どもたち ★★★★
ベルリン・フィルと子どもたち(2004年・独)
監督:トマス・グルベ
撮影:エンリケ・サンチェス・ランチ、レネ・ダメ
音楽:マルクス・ウィンターバウアー、イゴール・ストラヴィンスキー
出演:サイモン・ラトル、ロイストン・マルドゥーム、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
総合:★★★★
意外性:★★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★★、訴求力:★★★★
ベルリン・フィルの音楽監督、サイモン・ラトルが、ドイツの子どもたち250人を集めて、ベルリン・フィルと競演させるという教育プロジェクトを始めた。そのプロジェクトの一環として、ストラヴィンスキーの「春の祭典」で、子どもたちに舞踏に参加させるという計画が持ち上がり、その経過を追ったドキュメント。
目にした批評があまり良いものではなかったので期待せずに見たが、このドキュメンタリー映画は良い。
まったくの素人でしかもちょっと斜に構えている子どもたち(ほとんどが不幸な生い立ちだそうだ)が変わっていく(というより、振り付け師のロイストン・マルドゥームが、子どもたちを変えていく)様子が非常に面白い。ロイストンは独自の教育観を展開しながら、子どもたちと接していく。横で見ていた教師が途中口をはさんだりするのだが、それがステレオタイプの反応で、その対比が面白い。この映画はなんと言っても教育論の映画である。
また、ある舞台ができあがる過程を描いた映画としても秀逸である。私も以前何度か舞台に上がった(素人芝居や『第九』演奏会など)が、舞台を作り上げるまでの高揚感やとまどいが、この映画で甦ってきた。記録という観点からも優れている。
映像もなかなか良いものが多く、ドキュメンタリーでこれほどの映像を見せつける作品というのも珍しい。
投稿時刻: 10:21 午前