竹林軒:竹林雑誌:巻頭言

思しきこと言はぬは、げにぞ腹ふくるる心ちしける(大宅世継)

ネット子に寄す
――「竹林雑誌」発刊に際して――


 「真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む。かつては民を愚昧ならしめるために学芸が最も狭き堂宇に閉鎖されたことがあった。今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことはつねに進取的なる民衆の切実なる要求である。」(『読書子に寄す――岩波文庫発刊に際して――』より)と、昭和二年に高らかに宣言したのは、岩波茂雄である。

 時代は変わり、今ではインターネットという新しい媒体によって膨大な情報にアクセスできるようになった。インターネットの登場により、一部の言論人の発言だけではなく、市井のあまたの人々の知識、思想、言論を共有できるようになった。つまり、情報の発信を「特権階級の独占より奪い返すこと」ができるようになった。かくして、巨大な智の集大成ができあがったのである。

 インターネットの情報を活用するネット子は、情報を受け入れるだけでなく提供することにも思いを馳せるべきだ。自身で「取るに足りない」と感じている情報でも、他人にとって重要な意味を持つことは往々にしてある。小さな発言が大きな波を作り出すこともある。吾人も受けるだけの側から情報を発信する側にまわることが重要と考えた。本「竹林雑誌」発刊の理由もそこにある。

 「竹林雑誌」は『竹林軒』に間借りして発刊するが、この計画たるや世間の一時の投機的なるものと異なり、永遠の事業として吾人は微力を傾倒し、あらゆる犠牲を忍んで今後永久に継続発展せしめ、もってホームページの使命を遺憾なく果たさしめることを期する。芸術を愛し知識を求むる士の自ら進んでこの挙に参加し、希望と忠言とを寄せられることは吾人の熱望するところである。その性質上経済的には最も困難多きこの事業にあえて当たらんとする吾人の志を諒として、その達成のため世のネット子とのうるわしき共同を期待する。

 平成十七年三月

編集人 南野 是識(みなみのただし)