失踪日記 ★★★★


失踪日記
吾妻ひでお著
イースト・プレス
★★★★

これはすごい。
吾妻ひでおと言えば、かつて少年チャンピオンで長期間にわたり連載を持っていたメジャー漫画家である。少年チャンピオンの連載時(「ふたりと5人」、「エイトビート」など)が私の子供時代と一致する。80年代は、ミニコミで書いていたのをちょくちょく見ていたので、そのミニコミ誌の方がメジャーになったのかと勘違いしていたくらいだ(その辺の事情もこの本に書かれている)。
ともかく、そのメジャーな漫画家が、いろいろなことに行き詰まり、89年11月、突然失踪し、ホームレスになった。その後警察に見つかって、いったんは家に戻り仕事にも復帰するが、92年4月、ふたたび突然(家族の視点から言うと)いなくなってしまう。本人はふたたびホームレス生活に戻り、その後、ガスの配管工としてスカウト(!)され、再度、警察に連れ戻される。再度復職するが、今度はアルコール依存症になり、精神病院に入院することになる。
こういう異色の経歴が、表現者である当人によって(マンガという手段で)語られたのがこの本である。その内容たるやすさまじいばかりだが、ギャグマンガの手法でこれを描いているため、かなり笑えるのだな、これが。冒頭に「この漫画は人生をポジティブに見つめ、なるべくリアリズムを排除して描いています」「リアルだと描くの辛いし暗くなるからね」と書かれているが、その意図は十分成功している。内容自体はかなり悲惨なんだが。
全体を通してなんとなく前向き(現在の著者の心境を反映しているのだろう)で、人間生きてりゃ何とかなるなと思わせる。来るべきサバイバル時代に備え、ホームレス教本として読むこともできる。ちなみに続編もある(出る?)ようだ。

投稿日: 金曜日 - 9 月 09, 2005 01:23 午後          


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