いま、小津安二郎 ★★★
いま、小津安二郎
小学館編
小学館ショトル・ライブラリー
★★★
小津安二郎について、衣装や道具などの趣味を中心にまとめた本。写真もふんだんで、面白い指摘も多い(特に小津映画では高尚な趣味があふれかえっているので)が、どうも雑誌感覚で、寄せ集めの感をぬぐえない。小学館の雑誌、『サライ』を読んでいるかのような感覚に陥った(もしかして『サライ』の特集の焼き直しか?)。
はじめの方に、原由美子というスタイリストが小津映画と小津自身の衣装を論じているエッセイがあり、「素敵だ」とか「趣味が良い」とか連発しているが、あまりしつこいのでうるさく感じてしまう。「素敵」かどうかは見る方で判断するから、当時の風俗とのかねあいとか、データだけを突きつけてくれと思う。小津が個人的に自身の服装にもこだわっていたことをしつこくしつこく言われると、こちらはしらけてしまう。「そんな細(こま)い野暮な人間だったのかい、オヅヤスは?」と憎まれ口も聞きたくなるところだ。実際のところは同じ服を何着も持っていたような人だったらしいので、服装のセンスをアピールするような野暮な人間ではなかったようだが、この原由美子をはじめとする何人かの書き手のこういった衣装への過剰な執着はその正反対に位置する。つまり野暮! 野暮な人間に小津安二郎を論じてほしくないという気持ちが残った。
逆に面白かったのは、俳優、三上真一郎の聞き書きだ。ただし彼は『巨匠とチンピラ』という本で、小津安二郎について書いているので、もしかしたらこの記事(!)もその焼き直しなのかも知れない(『サライ』はよく焼き直しやるしな……)。良くも悪くも雑誌的な本だ。
投稿日: 水曜日 - 11 月 30, 2005 09:21 午前