舞妓の反乱 ★★★☆


舞妓の反乱 「金権亡者」の巣窟化した祇園の金、かね、カネ
藤花、桃花、萩花、菊花著
データハウス
★★★☆

20年ほど前、祇園の舞妓さんと知り合う機会があり、「水揚げ」(芸妓になるための費用 --4・5千万円-- を負担し、舞妓のスポンサーになること、実際には愛人みたいなもの)の実態を聞いたことがある。いまだにそんなことがまかり通っているのかと驚いたが、この本で告発されている内容はもっとひどい。もちろん「水揚げ」のことも触れられている。以前聞いた話とまったく同じである。著者は、これについては「現代の人身売買」と切り捨てている。
著者たちは、かつて祇園の舞妓として、ある置き屋(「置き屋」とは舞妓が所属するプロダクションみたいなもので、一般的にそこで寝泊まりもする。ただし本書ではどこの置き屋かは特定されていない、残念だが)に所属しており、そこでひどい暴行を受け続けて、結局祇園から脱出(!)したという経歴を持つ、本物の元・祇園の舞妓である。彼女たちが所属していた置き屋は特にひどかったようだが、本書によると、多少差はあっても、どこの置き屋でも舞妓がひどい扱いを受けていることに変わりはないという。
本書を通してさまざまなことが告発されている。その内容は、
「祇園で私たちが体験したのは暴力、強制労働、通信の秘密侵害、盗聴、二十四時間の身体拘束、私物点検・奪取、労働補償としてのご祝儀強奪など、憲法で保障するあらゆる人権への侵害であり、金品奪取の行為です」(234ページ)という一文に凝縮されている。中でも暴力はひどく、髪をつかんで引きずり回したり、冬に裸で正座させたりとか、現代の女工哀史と言っても過言ではない。ちなみに祇園甲部の舞妓さんが通う芸事の学校は女紅場(にょこうば)学園というが、かつて私は、その前を通るたびに、そのゴロから「女工哀史」をイメージしていた。
悪徳置き屋から脱出した彼女たちは、その後、自分たちで「舞妓の館」という企業を始めて、現在に至っている(ようだ)。

「舞妓の館」ホームページ:http://www.maikohan.net/

投稿日: 日曜日 - 9 月 11, 2005 09:57 午前          


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