河内山宗俊 ★★★★


河内山宗俊(1936年・日活京都)
監督:山中貞雄
脚本:三村伸太郎
撮影:町井春美
出演:河原崎長十郎、中村翫右衛門、市川扇升、山岸しづ江、原節子、加東大介
★★★★

天才、山中貞雄が監督した、現存する3本の映画のうちの1本。
見るのは今回で2回目だが、前回よりも濃密に感じた。そしてストーリーの密度が高いのにビックリ。出血大サービスのシナリオだ。息もつかせぬ展開で、テンポが抜群に良い。
河内山宗俊のネタは歌舞伎の狂言が有名だが、以前歌舞伎で見たときはどうにも間延びしていて、しかも河内山の悪どさが好きになれなかったが、この映画の河内山は魅力的な人物になっている。あの話をここまで持ってくるという脚本家の力に舌を巻く。そういえば『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』でもこういう翻案をやっていて成功している。すごい才能だ。
演出のうまいのは言うまでもない。登場人物が非常に魅力的だ。あちこちにくすぐりがちりばめられており心地良い。
貧民窟のようなごちゃごちゃしたセット、夜店の照明の美しさ(モノクロなのに)、和服の着こなし(ちょっとだらしなくてリアル)など、至る所に目を見張る箇所がある。映画としての完成度の高さに感服した。
原節子の演技が少し古くさくていただけなかったが、これもある程度狙った演出なのかも知れない。

投稿日: 木曜日 - 11 月 10, 2005 09:16 午前          


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