丹下左膳餘話
百萬兩の壺 ★★★★☆
丹下左膳餘話
百萬兩の壺(1935年・日活京都)
監督:山中貞雄
原作:林不忘
脚本:三村伸太郎
出演:大河内傳次郎、喜代三,沢村国太郎、花井蘭子、山本礼三郎、鬼頭善一郎、板東勝太郎
★★★★☆
天才、山中貞雄が監督した、現存する3本の映画のうちの1本。
豪傑丹下左膳が、生活感の漂う、コミカルな役回りで登場する。しかも、当たり役の2枚目スター、大河内傳次郎が演じるというのだから、当時の意外性は、相当なものだっただろう。泉雅之のマンガで、ウルトラマンが女ウルトラマン(ウルトラよしこさんだったか?)とデートしたり、便所できばったりするのがあったが、ああいった感じに近いかもしれない……。
しかも、単に意外性を狙っただけでなく、ストーリーが実によく練られていて、見ていて感心することしきり。『河内山宗俊』もそうだったが、この山中貞雄と三村伸太郎のコンビは、映画のストーリーテラーとしては、日本の映画史で屈指ではないかと思わせるものがある。
沢村国太郎の演技が序盤かなりわざとらしかったが、本物の芸者、喜代三の小唄(?)も入っていてなかなか贅沢。くすぐりも多い。大河内傳次郎の殺陣も迫力あり、スリリングな展開もある。サヨナラ満塁ホームランのような痛快な映画で、山中貞雄の天才がいかんなく発揮された作品。
ちなみに、原作者の林不忘は、この映画にたいそう立腹したそうだ。
投稿日: 日曜日 - 11 月 13, 2005 08:09 午後