彼岸花 ★★★☆
彼岸花(1958年・松竹)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
出演:佐分利信、田中絹代、有馬稲子、久我美子、佐田啓二、浪花千栄子、山本富士子、笠智衆、渡辺文雄、中村伸郎、北竜二、高橋とよ
★★★☆
小津安二郎初のカラー作品。
『秋刀魚の味』のモチーフになる素材が詰まっている。たとえば主人公を中心とする悪友3人(佐分利信、中村伸郎、北竜二)が飲み屋の女将(高橋とよ)をからかう場面。佐分利信が笠智衆に変わったら『秋刀魚の味』のシーンになる。座敷での中村伸郎、北竜二の座る場所まで一緒で、もちろん飲み屋のつくりも一緒(飲み屋の名前も一緒だったような(注))。嫁入りのモチーフ自体も似ている(扱い方は多少異なるが)。『秋刀魚の味』は『彼岸花』の焼き直しということなのだろう。
前に見たときはあまり感じるところがなかったが、今回はかなり楽しめた。調度や演出に凝りまくっているというのがよくわかるし、映像も安定しているため、見ていて心地良い。人同士のつながりも不快さがまったくなく(頑固オヤジの佐分利信にしたってそうだ)、楽しくなる。
この映画でもっとも目立ったのは、浪花千栄子と山本富士子が演ずる、京都の旅館の女将親子で、浪花千栄子の「大阪のおばはん」ぶり(京都人の設定だが)に大変リアリティがあり、しかも映画をぶちこわしにするほど下品ではなく、絶品である。山本富士子演ずる娘も、いずれはこういう「大阪のおばはん」になるだろうと思わせるキャラクターで、ユーモラスで、魅力的だ。
小津映画は贅沢だ……とあらためて感じながら見ていた。
注:調べてみたらやはり一緒でした。「若松」。『秋日和』にも出てくるそうです
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「若松」と高橋とよ。ただし『秋日和』では、高橋とよは
「若松」の女将ではありません。
投稿日: 金曜日 - 11 月 25, 2005 09:59 午前