あこがれ ★★★☆


あこがれ(1966年・東宝)
監督:恩地日出夫
原作:木下恵介
脚本:山田太一
音楽:武満徹
出演:内藤洋子、田村亮、新珠三千代、加東大介、賀原夏子、小沢昭一、乙羽信子、沢村貞子、林寛子
★★★☆

『白馬のルンナ』の内藤洋子の初主演作だそうな。単なるアイドル・プログラム・ピクチャーかと思いきや、なかなか濃厚な映画である。
それもそのはず、スタッフ、キャストが今見ると大変豪華。ただし脚本の山田太一は劇映画第2作目で駆け出し、音楽の武満徹もまだまだルーキーだ。キャストの田村亮や乙羽信子もまだまだ若い。林寛子なんかまだ子供(子役)だ。皆その後出世したということだ。
この話の基になっているのは、テレビ・ドラマ、『記念樹』(1966年4月放送)である。『記念樹』は、木下恵介劇場の第1作で、木下恵介が初めてテレビに進出し、演出や脚本を手がけた、まさに「記念」碑的なドラマだ。孤児院を舞台にしており、基本的に1話完結で、さまざまな脚本家がそれぞれの話を担当している。木下恵介の弟子であった山田太一も、デビューしたばかりであったがこれに参加し、何本か書いている。ちなみにこのドラマには、田村亮の兄の田村正和や、原田芳雄も出演していた。この映画も、言ってみれば『記念樹』の中の1本みたいなノリである。
アイドルの内藤洋子が好演しており、同時にアイドル映画的な魅力も醸し出している。演出も割合抑えたものになっており、他の昔のアイドル映画みたいな恥ずかしさはない。脚本もしっかりしており、才能の片鱗が見受けられる。もっとも、山田太一作品ならではで多少の理屈っぽさはある。アイドル映画でもこれだけの硬い表現が出て許されるという……
まあ当時の日本人は、今よりはるかにレベルが高かったということだろう。

投稿日: 火曜日 - 12 月 06, 2005 03:48 午後          


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