なぜアメリカは戦うのか ★★★★


なぜアメリカは戦うのか
(2004年・米 シャーロット・ストリート・フィルムズ)
NHK ハイビジョン特集
総合:★★★★
意外性:★★★☆、映像:★★★、娯楽性:★★★☆、完成度:★★★★、訴求力:★★★★

アメリカ合衆国政府内で軍産複合体が力を持ちつつあることはよく知られていることだ。そしてこういった軍事産業がその売り上げを伸ばす上で欠かせないのが戦争だ。軍産複合体に支配されたアメリカは、方々で戦争を起こして、軍事産業に需要をもたらしている(イラク戦争もその一環)。軍事産業側も要職に人を送り込んだり取り込んだりすることで、政策決定に介入する。市民の税金はこうして軍事産業に流れていくことになる。
ベンジャミン・ミルフォードは日本を称して「泥棒国家」と言ったが、どうしてどうしてアメリカも立派な「泥棒国家」ですがな。しかも海外の人々の犠牲の上に成り立っているときている。汚職も日本とはスケールが違うようで、そのあたりもこの番組で紹介されていた(チェイニー副大統領とハリバートンの関係など)。
噂レベルでいろいろ言われていることをわかりやすくまとめ、現代アメリカにとっての戦争がどういう意味合いを持つか的確に指摘している優れたドキュメンタリーだ。
番組内で「米国内ではこれまでずっと民主主義と資本主義がせめぎ合ってきており、民主主義が優位だった時代もあるにはあったが、現在では資本主義が完全に力を持っている」というようなコメントがあった。一般的に「民主主義=資本主義」と考えられがちであるが、なかなか新しい視点で、目から鱗が落ちるような議論である。このドキュメンタリーの主張に従えば、「資本主義」が政府、議会、シンクタンクをすべて取り込んでしまったということになる。
今の日本も「小アメリカ」というような状況にある(当然と言えば当然だが)と感じさせられた1時間半だった。

サンダンス映画祭グランプリ(アメリカ・ドキュメンタリー部門)受賞

投稿日: 金曜日 - 2 月 17, 2006 06:14 午後          


©