戦争と平和
第4部 ★★★☆
戦争と平和
第4部:ピエール・ベズーホフ(1965〜67年・ソ)
監督:セルゲイ・ボンダルチュク
原作:L.
N.
トルストイ
音楽:ヴァチェスラフ・オフチンニコフ
出演:セルゲイ・ボンダルチュク、リュドミラ・サベリーエワ、ヴァチェスラフ・チーホノフ、イリーナ・スコブツェワ、アナスタシャ・ヴェルティンスカヤ
総合:★★★☆
意外性:★★★、映像:★★★☆、娯楽性:★★★、完成度:★★★、訴求力:★★★☆
壮大なスケールで描かれる『戦争と平和』。ソビエト時代に、巨費を投じて作ったという。長い長〜い大河映画もこれで完結。
第4部は、ボロディノの戦いからモスクワ入城、ナポレオン軍の暴虐、ナポレオン軍の撤退と歴史が動き、登場人物たちの人生もそれに合わせて揺れ動く。第4部は、まったく眠くなることもなく、相当な緊迫感がある。なるほど、第1部から第3部はすべてこのための導入部だったのだと納得させられる出来映えである。演出はやや粗く、拙いオーバーラップなどの効果もあるが、それでも、戦争や暴虐が身近にひたひたと迫る様子の表現は秀逸である。
ナポレオン戦争といえば、歴史の一出来事というマクロ的な感覚しかないが、こういう形で戦争の悲惨さを突きつけられると、歴史上の事件であるナポレオン戦争に対する認識も変わるというものだ。ゴヤがナポレオン戦争を告発するために描いた『1808年5月3日』が、非常に身近な感覚で思い出された(同じようなシーンがあったし、犠牲者がイエスのように描かれるシーンもあった)。
戦闘シーンは第1部から第4部まで力が入っており、ロマン派の絵画のような豪華さ(?)である。ものすごく金がかかっているのがよくわかる。「ソ連の威信をかけた」映画だったんだなとあらためて納得する。
全体的に、登場人物たちにあまり入れ込まない演出で、人間の営みを俯瞰するような映像、ナレーションであり、戦争(人間)の愚かさを訴えるメッセージは十分に伝わってきた。無骨ではあるが、贅沢で高級な良い映画である。
投稿日: 土曜日 - 3 月 25, 2006 05:46 午後