値段設定



前回紹介した『校庭の雑草図鑑』(上赤弘文著、佐賀県生物部会編)について。
この本は定価2,000円だが、Amazonでこの本を検索してみると、「ユーズド商品」(つまり古本)として、3,000円、4,199円の値段がつけられたものが売られている。「ユーズド商品」というのは、個人や古書店が出品するもので、「ネットオークション」に近いものだ(ただし値段は固定)。時折、在庫切れや絶版本に法外な値段をつけて売っている売り手がいて、「足元見やがって」とこちらはキリキリするのだ。以前、欲しかった高田渡のCD『渡』(現在品切れらしい、Amazonによると)に10,000円の値段が付けられていて、コノヤローと思ったのだが、それがすぐになくなった(売れた?)んで二度ビックリだった。ところが先日、このCDがとあるショップで定価販売されていた。もちろん速攻で買った。なんでも、そのショップによると「品切れ」ではないらしいんだ、これが。なんだかよくわからないが。
閑話休題。『校庭の雑草図鑑』だが、これは現在、定価で購入できる本である。おそらくこれも「品切れ」の時期があり、それでこういう値段をつけた業者が現れたんだろうが、その後、増刷されたかなんかでこういう逆転現象が起こったのではないかと思う。定価で新刊本が手に入るのに、わざわざ倍以上の値段の古本を買うような人はまずいないだろう。この業者もそろそろAmazonをチェックして値段を変えた方が良いんじゃないのと老婆心ながら思う。
しかし品切れになっているからといって法外な値段で売るのは正直全然感心しない。もちろん古本屋さんの商売を否定するわけではないが、絶版になって10年、20年とかの本ならいざ知らず、数年前に出た本やCDにプレミアをつけるなどというのは、少し人間性を疑ってしまう。「そんなにしてもうけたいかよ」と思うわけだ。この間読んだ『駆け出しネット古書店日記』で、古書店主になった著者が「この値段設定が気に入らないなら買うな」というようなことを書いていた。私は思わず「ハイ買いません」と突っ込みを入れた。
Amazonで検索すると、品切れになっているのがすぐわかるんで何だが、ちょっと最近の品切れ度はひどすぎやしませんか。1年前、2年前に出た本やCDが品切れ(その実、絶版)というのは問題ありだ。出版者側が余剰の在庫を抱えたくないのはわかるが、出版してたとえば5年間くらいは、維持していく責任が道義的にあるんじゃないかと思う。家電メーカーだって、製造開始から5年間は部品を確保しておかなければならないはずだ(義務を果たしていないメーカーも中にはあるが)。もし維持できないんだったら、版権を他社に格安で売らなければならないとか、ある程度規制して欲しいくらいだ。
大手CD版元のエイベックスとAmazonが共同で、URC(アングラ・レコード・クラブ)のレコードをCDという形で復刻したのは、2003年末だ。私は2004年にそのうちの数枚を買おうとしたが、なんと品切れ! エイベックスもAmazonも業界では大手じゃないか。なんで1年で品切れなんだ。そういういい加減な態度でCDを出すのなら、最初から他の(もっと良心的な)メーカーに版権を譲って欲しいものだ。エイベックスなんて、そもそもCDにプロテクトをかけるような、悪名高いメーカーだ。URCの音源といえば、ある意味、日本人共有の財産に近い。エイベックスがURCのレコードを復刻するというのが、そもそも一種の形容矛盾のようなものだ。
それでまあ、こういう良心のかけらもない版元が増えるから、良心のかけらもない値段設定がはびこると言いたいわけだ。
CDや本を出品する人には、良識をわきまえた値段設定をして欲しいものだ。

投稿日: 日曜日 - 6 月 19, 2005 12:53 午後          


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