マニアの集い タモリ倶楽部



かつてテレビ朝日のバラエティ番組『タモリ倶楽部』で「おかやま地産地消の歌」が取り上げられ笑いものにされたといって、私の知り合い(岡山で地産地消運動を推進している人)が怒っていた。残念ながらこの回は見ていないが、大体どんな感じかは想像できる(< ほとんど毎回見てるから)。
私とて、民放のバラエティ番組については、見る価値のあるものはほとんどないと思っている。多くのバラエティ番組は、「バカ騒ぎしているだけで楽しいという若者」向けに作られていて、ほとんど内容が伴っていない。それに見せ方もつたない。バラエティ番組に限らず、日本の放送の質は年々低下しているというのが私の印象だ。
で、この『タモリ倶楽部』だが、毎回マニアックなテーマを取り上げて、タモリと数人のゲストで遊ぶという構成で、確かに安直といえば安直で、しかも下品で下劣なところもある。PTA型の良識人には煙たがられるだろう。上記の知り合いが怒るのもわからないではない。だが、タモリをはじめとする世のオヤジなんてものは下品で下劣なもんである。一般的な良識だけで四角四面に判断すると真実が見えなくなる。
前にも書いたが、本当に好きな人が好きなものについて語るのは、聞いていて非常に面白いものだ。この番組のキャスター(?)であるタモリは、かなりのマニア的嗜好があり、地図や船や鉄道など、オタッキーな分野でなかなかの知識を披露してくれる(船舶免許も持っているらしい)。企画にどの程度タッチしているかは知らないが、タモリの趣味が番組に色濃く反映されている。マニアのタモリ以外にも、その分野の専門家(というかマニアの人)がゲストで登場してきていろいろと解説したりするが、とても楽しそうに見える。
先日などは、タモリと原田芳雄(2人とも相当の鉄道マニアらしい)が実際に鉄道車両を運転体験するという企画があり、原田芳雄みたいな大物俳優がこんな夜中の番組に出てきてタモリと遊ぶというのも意外であったが、またこの2人が楽しそうにというか幸せそうにというか、一生懸命電車を運転するのだ。「大人の遊び」を標榜する雑誌がいくつかあるが、まさに大人の遊びといったあんばいである。私は鉄道にはまったく興味がないが、マニアがマニアの知識を披露しながら遊ぶ姿を見るのはなかなか楽しいものである。
焚き火(04年3月16日放送分)がテーマの回もなかなか面白かった。この放送では、焚き火マニアがタモリ一行に焚き火の楽しさを伝授するという趣向で、親子向けの野外教室みたいな企画だったが、このときに登場した講師(マニア代表)が(民族楽器の回にも出ていた)関根秀樹という人で、『焚き火大全』というマニア本の著者の1人でもある。番組自体は、あまり芳しい結果にならなかった(予定通りにバームクーヘンができなかったりした。ただし盛り上がるには盛り上がったので番組としてはOKか)が、こういう焚き火の作法というか方法に興味がわいた私は、結局『焚き火大全』を買うことになったのだ(ちなみにこの本はかなり楽しめた)。このように、この番組から興味の対象が広がるということもよくある。
番組の本題のテーマ以外にも、BGMが結構遊んでいて、謎解きを考えるのも面白い。たとえばなぎら健壱が登場するときは、「ぎーらぎーら太陽が」(安西マリアの「涙の太陽」)と流れたりなど。まあしゃれや語呂合わせの類だが、一般的なBGMの使い方とはあきらかに違うでしょ。ほとんどの人は気づかないんじゃないかと思っていたが(私も1年ほど前に気づき、鬼の首を取ったような気になっていた)、「ホームラン2号」というホームページで、タモリ倶楽部で毎回使われているBGMの謎解きをやっていることを知った。それにWikiPediaの「タモリ倶楽部」の項でもBGMのしゃれのことが紹介されていたので、案外有名なのかも知れない。
タモリ倶楽部関連のホームページには、他にも「タモリ倶楽部のへや」がある。このホームページは、各回ごと(なんと98年1月からずっとだ)に内容を詳細に紹介しており解説を加えている。名物コーナー「空耳アワー」の解説ページもある(「空耳アワー研究所」)。さすがにマニア番組らしくコアなファンが集まっている。
この番組もすでに20年以上続いているが、「徹子の部屋」みたいな名物長寿番組になるんだろうか。夜中に細々と続けていただきたいものだ。

投稿日: 日曜日 - 3 月 06, 2005 11:39 午前          


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