見た、何を、放課後を、栗田ひろみの放課後を前に栗田ひろみが主演した映画『放課後』について紹介したが、見る機会なんか当分ないだろう(DVD化されていないし)と思っていたところ、先日CS(日本映画専門チャンネル)で放送されたので、しっかり鑑賞した。
前に書いたように、テーマ曲は井上陽水の「夢の中へ」で、それ以外にも全編、井上陽水の曲があふれかえっている。音楽担当者が好きだったのかどうかはわからないが、なかなか効果的ではあった。映画の内容はというと、16歳の女子高校生(栗田ひろみ)が大人の男(地井武男)を好きになって、小悪魔的な魅力を発揮しながら誘惑していくという、ありきたりといえばありきたりのストーリーであった。もっとも当時は、こういうストーリーが新奇だったかも知れない。原田知世が主演した『早春物語』(1985年・角川)なども同じような話であったが、こちらは主人公の性格が途中から破綻しており、メチャクチャな話になっていた。それに比べれば、よくまとまっていて、主人公の心の移り変わりもあまり不自然さはなかった。 この映画はなんと、公開時、マーク・レスターの『小さな恋のメロディ』と同時上映されていたらしく、脳天気な青春映画の『小さな恋……』と、青春の暗部を描いている『放課後』との対比として提供されたのではないかと、この番組で映画解説をしていた女性アナウンサー(阿部知世)は言っていた。また、この映画について「ひっじょーうにグレーイッシュ」などと表現しており、「最後の主題曲のところでは思わず涙を流す自分がいた」と言っていた。 私はというと、最後の主題曲の部分を見ていて、日活ロマン・ポルノに似てるな……と思った程度で、到底涙なんか出てこなかった(この女性のように、ここまで感情移入できたら、どんな映画でも楽しめるだろうなと思う)。だが、カット割りや雰囲気、暗い画面が多いところなんか、本当に日活ロマン・ポルノのようだったのだ。スタッフ、キャストのテロップも、書体や構成が非常に似ている。その背景に、テニスをする栗田ひろみがだらだらと流れるあたりもロマン・ポルノ風だ。これで濡れ場が(意味もなく)もっと出てくれば、間違いなくロマン・ポルノである。ストーリーも、ロマン・ポルノでありがちなものだ。 主演の栗田ひろみについても、あまり魅力的に描かれていない。どちらかというと生身の人間として表現されているようで、そのあたりもロマン・ポルノ風である。ロマン・ポルノを見たことのある人はわかると思うが、女優が生々しくてあまり魅力的ではないのだ。小津安二郎などの映画では、女優がやたら魅力的である。その辺はアプローチの違いなのだろう。栗田ひろみについては、たしかに美しく描かれているシーンもあるのだが、でこが出ていてやや奥目であるため、照明の具合で般若のような顔になってしまっていた。いくら生々しく描くからといってもこういう絵はどんなもんかと思う。立ち居についても、小津映画のようにエレガントでなく、そこが逆にリアリティを醸し出している。 結論。この映画は東宝プチ「ロマンポルノ」(ただしポルノ抜き)である。したがって、日活ロマン・ポルノを見るときのように、だらけた格好で緊張せずに、流し見するのが適している(一生懸命見ると疲れます)。 投稿日: 日曜日 - 12 月 18, 2005 09:44 午前 |