覆面座談会 その3 中国が元気だ、でも……デモもストライキもねぇやA=シニカルな後輩
B=シニカルな先輩 C=保守中道を行く自称論客 A:中国がまた騒々しいですね。こちら。各地で反日デモ 瀋陽で初の大規模化、総領事館に被害(asahi.comより)。
B:元気だね、中国。エネルギーがありあまってるんだろ。若い奴らが騒ぐのといっしょだな。もっとも、若い奴らも以前ほどは元気ないけどな、日本じゃ。 C:そんな問題かね。ゆゆしき事態だと思うが。 A:ちまたじゃ、中国国内で行われている90年代以降の反日教育のせいだとかいわれてますけど。こちら。デモは「愛国主義・反日教育の成果」 文科相が批判(asahi.comより)。 C:「政府に対する不満を解消するために愛国教育に力を注いだ」というやつだな。 B:そりゃある意味で事実かもしれないが、国務大臣が発言するようなことかね。考えが足りないというか、おつむが足りないというか……。 C:じゃどうすれば良いって言うんだ? 原因を究明することがいけないことっていうのか。 B:いやいや。それは良いんだが、私が思うに、本当の原因は、今の日本政府の中国・韓国に対する挑発的な態度じゃないかってことだ。 A:靖国神社の公式参拝とかですか? B:そうそう。公然と公式参拝だってことを表明してるだろ、例の親分。歴史教科書や領土でもめているのに、周囲がいやがることを平然とやってのける、あの鈍感さ。しかも国の問題についてはいつも人ごとさ。コメントがいつも政治評論家みたいで人ごとだ、当事者なのにさ。 「中国側の言い分」というホームページがあるが、これによると、靖国神社にA級戦犯を合祀したために靖国神社参拝が日中共同声明の合意事項に反するようになった。合祀以来、共同声明の当事者である日本政府は、立場上靖国神社に参拝できなくなっているはずなのに、今の首相はぬけぬけとその約束事項を反故にしているというわけだ。もっともこれは、かなり現・日本政府の方向性に歩み寄った考え方だと思う。靖国神社が政治に関係すること自体の問題性は、ここでは触れられていない。 C:そんなこと言ってると、いつまでも中国や韓国に謝罪し続けなきゃいけないだろうが。戦争が終わってから60年も経つのに、周囲に気を配るばかりじゃ、まともな外交もできないだろ。 B:人間同士のつきあいでも、周囲にある程度気を配るのは当たり前だと思うけど。自分を強引に押し通していると、周りから浮いちゃうよ。そんなのは危ない奴だと思われるし、そんなことじゃ社会に適応できない。 C:それじゃあ、Bはこのデモに賛成というわけだな。 B:賛成とは言わないが、本当の問題点を究明しなきゃいけないということだ。 ホントのところ、首相が公式参拝を表明した時点で国内で大規模なデモが起こっても不思議じゃなかったんだが、今の日本にはそういう意思表明さえはばかられる雰囲気がある。大体今のほとんどの日本人は、靖国問題について興味がないんだろう。それに、中国や韓国の人々をどれだけ挑発しているかという事実さえ、触れられることが少なくなった。国内でたとえこの種のデモがあってもあまり報道されないし。 A:でも、僕もテレビで中国のデモを見てて、なんだか不愉快になりましたけどね。自分が攻撃されてるような感じってんですか。 サッカーのアジアカップのときのブーイングもそうですが。あれだけ敵対心を向けられるとイヤな気がしますよ。こっちも敵意を持ちますね。決勝で3-1で勝ったときはザマミロってな感じでしたよ。 C:俺はね、中国政府の愛国教育に対して反発を感じている。中国でよく言われていることに「中国人は1人では竜だが集まると虫になる、日本人は1人では虫だが集まると竜になる」というのがあるらしい。とにかく中国人は集団になると何をするかわからん。 B:そりゃ日本人でも一緒だと思うが……。 C:俺はね、今回のデモを見ると、文化大革命を思い出すの。ある考え方を植え付けられると、ガーッと1つの方向に行ってしまうだろ、集団で。それに異議を唱えるとつるし上げられる。一種のファシズムだ。 A:文革はいろんな映画で取り上げられていて僕もいくつか見ましたが、確かにちょっと空恐ろしいものがありますね。もっとも、第二次大戦中の日本の軍国主義はもっとイヤですけどね。 B:私がね、今回一番問題があると思うのは、日本政府の対応なんだよ。中国政府に謝罪を要求して、中国が「はい、ごめんなさい」と言える立場にあるかということだ。 C:しかしね、ジュネーブ条約でも、大使館の保護は大使館が置かれている行政府の責任ということになっている。中国もこれに調印してるんだ。謝罪するのは当然だろう。 B:いや、それはそうなんだが、中国政府が謝罪したりしたら、デモの敵意の対象が今度は中国政府に向くことになる。それって、中国政府が一番恐れていることだろ。相手が一番やりたくないことをやれっていうのが外交かな。相手がやりたくない、こっちもメンツがある、そういう場合は落としどころを探らなければならない。現に上海市当局は、被害にあった店舗に対して補償に応じると表明している。中国側が求めているのはこの辺りだ。それが外交の落としどころってもんさ。 A:なるほどね。 B:日本政府は、北朝鮮問題でも相手のメンツをつぶすようなことを平気でやっている。外交もへったくれもないよ、これじゃ。どうやって、双方のメンツを守りながら、落としどころを探るかが重要なんだ。一方的にお前が悪いといって約束を反故にしていたら、解決するものも解決しなくなる。北朝鮮問題がこんなにこんがらがったのは、外交能力がないことが原因だよ。 C:Bは北朝鮮を擁護するのか? B:いや、拉致が許されるなんて思ってないよ。政府レベルで他国の国民を拉致するなんて絶対に許されないが、相手側に問題があるかどうかは外交技術の上であまり問題にならない。どこに目標を置いて、どうやったらそこに到達できるかを探るのが重要だと言ってるんだ。北朝鮮問題の場合、拉致された人々を全員奪還するのが当座の目標になる。パフォーマンスのために北朝鮮を仮装敵に祭り上げてしまったら、落としどころが見つからなくなるだろ。奪還できる可能性を完全につぶしてしまうことになる。政府は、自分たちのパフォーマンスのために、被害者を救えない状況を作ってしまったんだ。 C:その解釈はちょっと無理があるな。それに、そんなに北朝鮮に妥協すれば、ますますつけあがらせるだけだ。そういうのを弱腰外交というんだ。 B:弱腰と言われようとも問題を平和に解決できる方が良いと思うが。 C:相手から顔に泥を塗られて平気でいると、国際社会でバカにされるだけだ。 B:バカにされても良いじゃないか。バカになれば良いんだ。バカだと思われてみんなと仲良くやっていけるっていう奴が一番賢いんだ。 C:Bにはプライドというものがないんだな。 B:「♪捨ててしまったわ、昔のプライドなんて」 C:ちゃかすなよ。 A:「プライドを持つ、プライドを捨てる、どちらも大事なことなんだ。」 B:昔のコマーシャルだね、織田裕二が出てた……。 C:Bみたいな考え方はおそらくほとんどの日本人が拒否すると思うよ。目には目を、歯には歯を。それが国際社会だ。国際社会は弱肉強食だ。弱みを見せるとつけ込まれて身ぐるみ剥がされるのがオチだ。Bのような理想主義は口当たりは良いが中身がない。苦労を知らんというか……。 B:でもね、「目には目」なんていうのが戦争を生み出すんだよ。パレスチナ問題を見なよ。あんなになってしまったら落としどころがなかなか見つからない。落としどころが見つかるうちに落とさなければとんでもないことになるよ。 A:そろそろ、BさんとCさんも落としどころ見つけたいですね。 C:Bと話してるといつもこんな感じになるんだ。Bは俺のメンツをつぶしたがるから。 B:メンツをつぶそうとしてるわけじゃないんだが……。まあ、いろいろな視点から検討した方が、ものがよく見えて良いんじゃないかということさ。ま、今日はCが正しいってことで落としどころを探そうか。私の負けってことにしとこう。これで良いかな? C:Aよ、俺とBで論争するときは、いつも間に入ってくれよ。 A:落としどころが見つかったところで、飲みにでも行きますか。 C:やめとこう。また同じ話題で言い争いになるのが「オチ」だ。 A:はあ、今回はそういう「オチ」ですか。お後がよろしいようで……。 投稿日: 火曜日 - 4 月 19, 2005 11:45 午前 |