変異型ヤコブ病の疑問



2005年2月4日、「厚生労働省が国内初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を確認した」というニュースが流れ、新聞でもトップ扱いになるなど、なかなかに大きなセンセーションを巻き起こした。厚労省は「通常の生活で人から人へは感染せず、二次感染を心配する必要はない」などと、相変わらず役人らしい対応をして笑わせてくれる。
だが、上記のasahi.comの記事から判断すると、症状はアルツハイマー病とまったく変わらない。どうやら患者の英国滞在経験がクロイツフェルト・ヤコブ病であるとの判断の根拠になったのではないかと推測できる。
別項で紹介している『ハンバーガーに殺される 食肉処理事情とアルツハイマー病の大流行』によると、クロイツフェルト・ヤコブ病とアルツハイマー病のどちらであるかは、問診によって判断されるということだった。「現在ではクロイツフェルト・ヤコブ病とBSEとアルツハイマー病は区別されているが、本当のところはどれもプリオン介在性の同じ伝染病である」というのが、この本の趣旨である。てことは(つまりこの本の記述が正しいということを前提にすれば)、今回見つかったクロイツフェルト・ヤコブ病の患者は若年性アルツハイマーとも言えるということだ。逆にアルツハイマー病の患者は、クロイツフェルト・ヤコブ病またはBSEの患者ということもできるわけだが。
「クロイツフェルト・ヤコブ病=BSE=アルツハイマー病」という構図は、明快な上、説得力がある。クロイツフェルト・ヤコブ病が日本に上陸したなどと怪しい発表に取り乱すよりも、その原因を特定(または推定)し、対策をとることが重要ではないか。その対策というのが、つまり厳正な食肉管理である。
現在、日本の牛肉生産者に対しては、(BSEを介在するとされる)肉骨粉が禁止されているが、豚肉や鶏肉の生産者については禁止されていない。豚や鶏は寿命が短いので、BSEが発症することはほとんどない(食用豚および鶏の寿命は10年未満、BSEの潜伏期間は10年から30年と言われている)。今のところ、反芻類(牛、山羊、羊)以外はBSEが移ることはないとされているが、人間に移ることを考えあわせると当然豚や鶏にも移ることが考えられる。すでに遅きに失している感もあるが、今からでも野放図な食肉生産を禁止し、厳正な食肉管理を行政主導で行うことが望まれる。米国の未検査牛肉の輸入再開なんてのはもってのほかである。吉野家で行列作ってる場合じゃないよ。

投稿日: 火曜日 - 2 月 08, 2005 03:01 午後          


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